『長門守の陰謀』
2010/06/27(Sun)
 藤沢周平著 『長門守の陰謀』 を読む。
 
 えっ!だれがどこの藩にだれを藩主に据えようとしているんですって?
と、わかりにくいので、最初のほうを2・3度読みなおす。
 結局なかごろまで読んで、事情が飲み込める。
 長門藩の藩主長門守忠重が、隣の兄忠勝の庄内藩をも自分の思うとおりにしようと忠重の息子の九八郎を次代藩主にと思っているということがわかった。

 庄内藩では、忠勝は弟の忠重を溺愛しており、忠勝が忠重の希望を叶えかねないので早くから忠重派ができており、忠勝の息子忠当(ただまさ)を次代藩主にと思っている派と、藩が二分されるようなことになると藩が取り潰しになると危惧している。それに、忠重は百姓一揆が起きるほどの暴君で知れ渡っているのでこんな人が藩を思うようにするようになってはいけないと危惧するのである。
 しかし忠重は執拗で反忠重は結局処罰を受けるようなことになる。
 ところが九八郎が次代藩主を断ったので、忠勝の息子忠当(ただまさ)を次代藩主になる。
陰謀を企てた長門の守の忠重。このような人に翻弄された人はほんとに人生を棒に振ってしまう。
 
 今の世でもこんなことの繰り返しかもしれない。
スポンサーサイト
この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
『遠い少女』
2010/06/26(Sat)
藤沢周平著 『遠い少女』 を読む。

 鶴蔵は子どもの頃半年ほど寺子屋に行ったことがあった。そこに通ってきていたおこんという女の子に魅かれていたが、彼女は境遇もいいし、勉強も良く出来たので、ひけめもありそぶりも見せられなかった。

 鶴蔵は、真面目に働き単純だが一本の道をまっすぐ歩いてきた。
 そうして一軒の店の主になった鶴蔵は、40を過ぎてごく希に人間の別の行き方に心を奪われるようになった。
 そんな時、寺子屋でよく見知って魅かれてもいたおこんの噂を聞く。思ってもみなかったすさんだ生活を想像させるようなおこんの噂に、鶴蔵はその様子を伺うようになる。
 おこんの情夫は人殺しをしたために資金の調達をおこんに頼んでいた。おこんは近づいてきた鶴蔵をだまして25両の金を持ってこさせるが、受け取るときになって、そのことをかぎつけた岡引の音次によって、騙していることをばらされてしまう。
 そのとき、おこんの口汚いことばや態度に、少女時代とはまるで違って遠いところにいるおこんに気づくというお話。

 鶴蔵のように、まっすぐな人間にみえても、人は何歳になっても道を踏み誤る要素があるなと感じる。

この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
『冬の潮』
2010/06/25(Fri)
 藤沢周平著 『冬の潮』 を読む。

 市兵衛は十年前株を買って碓井屋という紙問屋になった。
息子の茂太郎は両親の勧める同業の紙問屋の桔梗屋の娘との話があるにもかかわらずお茶屋で働いていたおぬいと結婚する。
 しばらくして、市兵衛の妻は病気でなくなり、茂太郎はなぜかまたお茶屋に通うようになり茶屋からの帰り酒によって欄干から落ちて死んでしまう。
 のこされた市兵衛は使用人は数人いるものの、家族はおぬいだけになってしまう。しかし、二人の間について世間がとやかくうるさいので大金を持たせておぬいを実家に返す。
 実家に帰るときは充分にお金を頂いたのでうちですごしますと言い、また困ったときにはいってくれという市兵衛に「はい」と素直に言ったが、自由の身になったおぬいは、またお茶屋ではたらきはじめる。
 すでに実家に帰った嫁。赤の他人になたのだから自由に生きていけば良いと思うものの家族がまったくいなくなった市兵衛は、おぬいが悪い男と落ちていく姿が見ていられない。男に身を引いてくれるよう大金を使うがその男に馬鹿にされる。傷ついた市兵衛はその男を逆に痛めつけようとたまに用心棒を頼む男に少し痛めつけてくれるように依頼する。ところがその男、乱闘の行きがかり上おぬいの男を殺してしまう。そして岡引に捕まった男は市兵衛に殺しを頼まれたと証言したために市兵衛はしょっ引かれてしまう。
 家族のいないさみしさに迷う男を描いている。
この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
『夕べの光』
2010/06/24(Thu)
藤沢周平著 『夕べの光』 を読む。

 おりんの夫は先妻のこどもを遺して死んだ。
 おりんは30歳になっていたが美しいので再婚の話もあり言い寄る人もいる。しかしこの遺された血のつながらない幸助という6歳の子どもを捨てれず一人身を通すというはなし。

 子どもをそんな風に思える大人というのがなんとも嬉しい。
 最近不審者がおおいいということでほとんどの保護者が子どもの送り迎えをするようになった。私たちの子どものころのことを考えるとほんとに世の中の移り変わりを感じる。そんな中で父親や母親とこどもの交わりを間近に見ることが多くなり、その間に流れる情愛の姿を見ていて心を打たれることがよくある。世の中が不景気になって、人々が本当の幸福とはなんだろうか、そして家族とはなんだろうかと立ち止まって考えるようになったように感じるのは私だけだろうか。
この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
『夢ぞ見し』
2010/06/23(Wed)
 藤沢周平著 『夢ぞ見し』 を読む。

 御槍組に勤めていて25石の夫を持つ昌江は丈があって姿が良い。
 夫は全体に印象がぱっとせず背が低く肩幅だけがあり丈夫そうだが煮え切らない男で、自分からはほとんど喋らず、ここ二か月は身体に触れても来ず、毎日ぐったり疲れて遅く帰宅してはすぐいびきをかいて寝るばかりで、昌江は腹を立てていた。
 そんな時1人の長身の美男子の若者が尋ねてきて「厄介になる」という。そういえば夫が○○と言う男がきたらしばらく家であずかることになると言っていたことを思い出し、世話をすることになる。 それにしても大柄な口を利く若者でしつけなければとも思っていたが、何かしらさっぱりとして嫌味がない。夫は毎日出勤して遅く帰ってくるが、この男は縫い物をしている昌江のそばでごろごろして本を読んでいたりする。昌江はだんだん好感を持つようになり夢を抱いたりもするようになる。
ある日、昌江が家に帰ってくるなり家の前で、どこかから帰ってきたばかりのその若者が4人の男に取り囲まれてきりあいになった。その時、風のように夫がまえを掛けていき、相手を切り倒し、若者の傷の手当てをする。その夜から、その若者は家を出て行く。
 後でわかったことはこの若者があたらしく藩主になった元藩主の三男繁之助であったことだった。
夫はそれ以来早く帰ってくるようになり、子どもも出来たという話。
 一見間抜けそうに見える夫が実は藩一番の剣術の使い手であり、跡継ぎ問題で奔走していたことがわかり、そして成功させ、気楽に知り合った男が、じつは藩主だったというそんなことではなく、女として情を掛ける夢の話。
 とてもさわやかな話。

この記事のURL | 未分類 | コメント(2) | TB(0) | ▲ top
『春の雪』
2010/06/22(Tue)

藤沢周平著 『春に雪』 を読む。

みさには同じ奉公先に幼馴染の二人の男性がいる。
そのうちの1人作次郎は男ぶりもよく奉公先で仕事も良く出来て信用もあり後はみさと一緒になると誰もが噂していたし本人たちもそんな予感がしていた。
一方の茂太は早くから先に同じ奉公先に奉公に来ていてずっと頑張っていたが、うだつがあがらず「のろ」と呼ばれていた。
 茂太のことを作次郎は小さいときから常にかばっていたが、店でもやはりいろいろかばっている。茂太が博打に手をだしたと聞き意見をし始末をつけてやったりしてもいた。みさは噂どおり作太郎と一緒になるのかもしれないと思ってはいたが、悪漢にとりかこまれた自分を助けてくれて大怪我をした茂太が同じように自分を好いていることを知り思うようにならない恋路のために博打に手を出していたことを知り茂太に一度身を任せてしまう。作次郎は其のことを知り店をやめる。賭場で其の姿を見かけたという人もいる。みさも店をやめるが、茂太とも作太郎とも結婚はしない。

 みさのとった行動が、幼馴染・最近で言えば同級生との、他の関係では見られない微妙な心理を上手に描いていて感心する。人の心根の美しさとか意気地いうようなものは、成人して社会で知り合ってなかなかわからないような気がする。幼馴染・最近で言えば同級生、そして家族、であってわかりあっているようなも、それと恋愛感情とは相容れないものなのか、そのところをほんとになりゆきで上手に表現してあって感じ入る。

この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
我が家のおがたまのき(招霊の木)
2010/06/20(Sun)
 おがたまのき(招霊の木)の鉢植えを頂いた。
 一円だまの裏に描かれているおがたまのき。
 そのいわれらしきものや、その木の歴史的な意味を知ったときから、一度でいいからその木を見たいという思いに捕らえられていた。
 植物の話題になるとそのことをしゃべっていたのか知り合いの人が職場に届けてくれていた。
最初はなんの木かわからずどうしてこんなものを届けてくれたのだろうと思案していた。家に持ち帰り夫に見せると「榊かな?」といったので急にすべてのことを思い出し、今朝お礼の電話を入れた。
 「そうよ。おがたまの木よ。あなたが鉢植えがあるのなら欲しいと言っていたでしょう。友達の家にその木があっていろんなところから芽を出すから鉢植えに仕立てておいたものを頂いてきてあげたのよ。玄関においておくと花の季節にはバナナのような香りがするらしいよ。」と明るく話してくれた。
夫は、いつも私が鉢植えを持って帰ると、「あら、また枯らそうと思ってかわいそうに」といって結局自分の思い通りに肥料をたんとあたえてあらゆるものを自分のおなかのごとく爆発的な大きさにしてしまう。このたびも自分が世話をしなければと思っている様子。これでは想像した尊きおがたまの木も、我が家風のおがたまの木になるんだなと覚悟を決めなくては。

この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
『広重「江戸名所百景」より』
2010/06/18(Fri)
藤沢周平 著『広重「江戸名所百景」より』 を読む。

 「日暮れ竹河岸」
 商売の才覚のある市蔵は横町の借り店で儲けたので表通りに土地を借りて以前の空き店をこわして新しく店を立て替えたがさっぱり売れず借金取りに追われるようになる。潰れかかった店のために誰彼となく金を借り歩かねばならなくなった市蔵の様子を描く。

 「飛鳥山」
 江戸の北郊外王子権現のそばにある飛鳥山は、将軍徳川吉宗が庶民の行楽地としてひらかせたという桜の名所。
花はいまが盛り。
遠く千駄木から歩いてきた子どもが出来ないために夫に逃げられたことがあり、今では年老いた母親を看取るための小金もためている女がふとなついた子をさらって逃げてしまうというはなし。

 「飛鳥山」といえばどこかで読んだことがあるようなと思っていたら思い出した司馬遼太郎の『坂の上の雲』で秋山よしふるが試験のとき「飛鳥山」についての問題が出たが東京に出たばかりで「飛鳥山」のことを知らずに的外れな答案を出したというはなしであった。私もこの作品を読んで初めて「飛鳥山」について知ることが出来た。

 「雪の比丘尼橋」
 橘屋藤五郎は道中師といわれる人入れ稼業。今でいう人材派遣会社。そこで食えなくなったときだけ働いていた鉄蔵。お前のような暮らしをしていたら若いうちはそれでもいいけど年をとったらどうする、私が死ねば末は野垂れ死にだよといっていた四十前に死んだ女房のいうとおりの末路を描く。

 「大はし夕立ち少女」
 いまは奉公に出ている12歳の少女。
幼い頃亡くなった化粧をすると別人のように美しくなったやさしかった母親の思い出を胸に、大好きなお使いに出かけて夕立に出会う少女の話。

 「猿若町月あかり」
 遊び人の甥っ子が親戚からお金を借り歩いていると言う。とうとう善衛右門のところにもやってきて、五両貸してくれというが、甥っ子の母親からためにならないから貨さないでくれと言われていたが、借りた金で返さないと酷い目に会うと言うので貨せられないと言って返したが気になって後を追って3両与えた後、暮らしぶりなど何も知らないのに貸してやってやはり後悔するという話。

 「桐畑に雨の降る日」
 ゆきが十歳のとき父親が病身の母親と自分を残して棟梁に渡すべきお金を持って駆け落ちした。そのあと母親も死んで1人になったが父親が帰ってきたら一緒に暮らせるようにと、住み込みも断って長屋にひとりで住んでいた。父の兄弟子だった大工に大阪で所帯を持って暮らしていると言う父親の消息を知って天涯孤独になっている自分に気づく。以前から所帯を持とうと言ってくれていた豊太の所に行く。男なんて嫌いみんな死んじゃえばいいといって泣くが豊太は、みんながそうじゃない大事にするよといってくれるというはなし。

 「品川洲崎の男」
 幼くして父母に死に別れ叔父夫婦に育てられた。血の繋がらないおばの方が情をかけてくれたが、子沢山のため奉公に出る。
小金もためて、風格のある男性にも間近く知り合う機会もありながら知り合いの世話でうだつの上がらない田舎者と所帯を持ってしまう。揺れる気持ちを持ちながら今の生活が幸せなのだとおもう。

江戸の町人の生活をあれこれと綴っていて元祖江戸っ子に出会ったかんじ。
この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
『江戸女絵姿十二景』
2010/06/15(Tue)
 藤沢周平 著 『江戸女絵姿十二景』 を読む。

「夜の雪」  父の急死によって潰れた雪駄問屋の娘
「うぐいす」  おしゃべり大工職人のおかみさん
「おぼろ月」 糸問屋の嫁入り前の娘
「つばめ」 早くに両親を亡くし祖父に引き取られ祖父が中風で倒れ水茶屋勤めに出て悪くなったがふとしたことで自分を取り戻した娘。
「梅雨の傘」 金を使い果たした男とは上手に別れ、上手に人のだんなを手に入れる女郎 
「朝顔」 子供のできない畳表問屋のおかみさん
「晩夏の光」 亭主と家を捨てて出て行った女房
「十三夜」 何日も留守がちの大工の女房
「明鳥」 吉原の花魁

「枯野」 信用の厚かった紙問屋の旦那の死後、女性関係の後始末をするおかみさん
「年の市」 後家のがんばりで油屋を切り盛りしたおかみさん
 「三日の暮色」仕事に腰の落ち着かない亭主が出て行って、今は紙問屋のおかみさん。

「あとがき」に一枚の絵から主題を得て、原稿用紙12、3枚の分量の一話をつくりあげるという趣向の企画で書いた小説と語っていた。そんな気がして浮世絵を見るような気持ちで読んだ。


この記事のURL | 未分類 | コメント(4) | TB(0) | ▲ top
『偉丈夫』
2010/06/14(Mon)
 藤沢周平 著 『偉丈夫』 を読む。

 家代々祐筆役の片桐家の婿権兵衛。
 
 ≪六尺に近い巨体、鼻はしっかりとあぐらをかき、口はしっかりと結ばれている。そして寡黙。≫

 藩の誰もが偉丈夫と認めている。
 その彼が、境界争いの掛け合い役という大役を仰せつかり夫婦共に青ざめる。じつは見た目の偉丈夫とは違い蚤のような心臓を供えた小心者であることを妻の満江だけが知っている。
 本藩との漆の取れる山の境界線をめぐって、分藩となって70年たった頃より100年間この境界をめぐっての争いが続いている。
 いよいよ、掛け合いの日に黙って相手の言い分を聞いていたが、権兵衛は、境界を決めた藩祖の意志を持ち出し、その意志を曲げて境界を変えるると言うなら一矢報いるとふるえながら発言をする。

 後日、「漆山の線引き問題は不毛の論争。本年を以って打ち切り」という本藩より申し入れがあり、長年の問題があっけなく片付いたというはなし江戸在住の藩主は大いに喜び役を上げるなど褒美をと伝えるが、実は上司も彼が蚤のような心臓の持ち主であることを知っていてそれはしないよと彼に伝えるという話。

 
掛け合いには胆力がありそうが大事と知る。

この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
『静かな木』
2010/06/12(Sat)
藤沢周平 著 『静かな木』 を読む。

孫左衛門は勘定方に出仕していたが、5年前に隠居した。隠居する5年前に連れ合いを亡くし、今は総領の権十郎が跡をついで同じ勘定方に出仕している。ほかに娘の久仁と息子の邦之助がおて良縁を得て今は他家の人になっている。

 暮れ逝く夕日にたつ葉をすべて落とした黒い欅の木を見てこのように静かな死を迎えたいと思う。

 そんな時、邦之助が「侮られたから」ということで鳥飼の息子とはたしあいをするという。そんなことをすれば、勝っても負けても婚家を窮地に追い込むことになる。
 孫左衛門は、少し待つように言いつけ、勘定方に出仕していたとき鳥飼の父親が不始末を起こした事に巻き込まれ家禄を減らされたことのあるそのことを盾に取り息子に果し合いを中止するよう命じてもらいたいとお願いする。
 果し合いは中止になる。
 じつは、この時、不祥事の証拠を確認するために書類を見せていただくようお願いしたとき書類一式がなくなっていたがこのことが表ざたになり鳥飼家は失脚し、孫左衛門は減らされた家禄が戻ってきた。
生きていればいいこともあると思う孫左衛門の話。
 

 江戸時代落ち着いた時代になっても、やはり武家社会では、腕の立つことが物事の決心をするうえで必要であったのだということを思せる部分があり、気の引き締まる思いがした。また、「侮られた」ということで果し合いをするという息子に有無をいわず理解する父親のありようにも時代の特徴を感じる。
この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
『安岡家の犬』
2010/06/11(Fri)
藤沢周平 著 『安岡家の犬』 を読む。

22歳の安岡甚之丞は親友の野地金之助に犬鍋をするからと誘われて喜んで出かけて行き、そこで食べた犬の肉が自分の家で飼っていた犬のアカの肉であると知らされ、腹を立てた甚之丞は、金之助が婚約していた自分の妹を嫁にはやらないと帰ってしまう。
 帰って家のものに事情を話すと、何もそこまでと言う母親。アカはもう年取っていてどこで野垂れ死にしようと誰かに食べられようと仕方ないと思うが、息子の思うようにすればいいと言う父親。当の妹はそんな人のところへは嫁に行かないと言う。
 しかし、後日金之助は悪かったと思いアカの代わりになるような赤犬を探しまわり、次の村次の村へと捜し歩くために家にも帰らなくなって、皆が心配し始めた2・3ヵ月後、どのように謝ろうかと赤犬を連れて安岡家の前を行ったり来たりその様子を見て妹と甚之助は大笑いして許す気になるというみじかい話。
 日本人も野良犬など捕まえて犬鍋などと称して犬を食べていたことを始めて知った。
この記事のURL | 未分類 | コメント(2) | TB(0) | ▲ top
『愛の炎』
2010/06/09(Wed)
 見延典子 著 『愛の炎』上下2巻 を読む。

 この小説は、読み応えがあり大変良い作品だった。

 著者の見延さんは札幌生まれなのに、遠く私の生まれ育った中国地方の山間部の山村の風俗が大変正確に描かれていると読むほどに感じる。

 まるでよく見知っているご近所の、実は知らないそれぞれのご家庭の実情をつぶさに垣間見るような気持ちで終始読んでいたような気がする。
 
 彫刻家の話では、実際彫刻家の主人を持つ友達のことを考える。また、陶芸の話では、以前わたしも仕事上陶芸を勉強しようと思い、道具一式をそろえ陶芸に関する本も色々読み、土について考え、釉薬について考え、窯について考えたこともあり、そのとき出会った陶芸にのめりこんでいる何人かの方々を思い出す。そして農園といえば、手広く観光バスを何台も乗り入れさせて集客して飛ぶ鳥を落とす勢いの美人の同級生の夫が成功させた観光農園を思い浮かべる。

 いろんな状況に折り合いをつけながら生きていくそんな人々の人生の決断のいきさつを語りかけてくる。

この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
『男ともだち』
2010/06/06(Sun)

 見延典子 著 『男ともだち』 を読む。

 ただただ男と女の話。
 歴史の話もまったくない。
 どうしても歴史のことを書き始めるとあれもこれも書かずにおれないと言った彼女の作品からすると気がぬける。
 彼女の作品としては2作目のようだ。
この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
『三人姉妹』
2010/06/05(Sat)
 見延典子 著 『三人姉妹』 を読む。

 長女・次女・三女、すべてが30歳台。
 広島県の呉・東京・札幌に住む3人の三様の生き方を綴る。

 娘をつれて出戻ってはいるものの実家の祖母や母とくらし他の兄弟の世話をかいがいしくする長女の葵の生き方に魅かれるものの、実際には次女のネムの自分勝手な心境に似ている自分に読むほどにうんざりする。

 この作品の中にも著者の大好きな『平家物語』の熊谷直実と若干17歳の笛の名手平敦盛の話が出てくる。そして、

 ≪実は熊谷直実は広島とも縁の深い人物でもある。13世紀に入り、子孫が所領を安芸国に与えられ、東国から移ってきた。以後地方の豪族として名を轟かせ、毛利氏が力を奮っていた時代傘下に入り、手腕を発揮した時期もある。広島市北西部には熊谷氏の子孫が築いた高松城があった。≫

 とある。高松城のあった高松山では毎年大文字祭りが行われる。今年もつい先の5月29日に例年より盛大に行われたばかりだ。

 戦国時代、安芸武田と毛利が戦っているとき地理的にもその間にある熊谷氏が寝返ることによって毛利が安芸武田を破ったと言うように私は理解していた。更に熊谷氏について見延さんのつづきをおこがましくも書き加えるなら、毛利が山口に移ったとき熊谷氏は毛利の家来として一緒に山口に行き、キリスト教に改宗した。禁制になって最後まで踏み絵をしなかったために熊谷氏は全員処刑されたと地域の郷土史家の冊子で読んだ。
 読んで数年後、夫と萩の町を散策していて意外な石碑に出会い感動して涙した。其の場所は古く教会があった場所で教会を移築するにあたり其の跡地に熊谷氏をたたえた巨大な石碑が建てられたということだった。そんなこんなと、自分の見知っている地域を舞台にした小説をはじめて読んで興奮していろんなことを思う。

 郷土史と言うのは、小説の端のほうであれ、読むほどに郷土愛が深まるという充実感を味わうことができて嬉しい。
この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
『遺された指輪』
2010/06/01(Tue)
 見延典子 著 『遺された指輪』 を読む。

 作者は札幌の出身だが現在広島に暮らしているためか、小説の舞台はおおかた20年前の広島だ。
 こんなに身近なところが小説の舞台になったのを読むのは初めてなのでわくわくする。
 しかも、宮島の対岸廿日市市。
 私は、県北の出身だが、長男である夫の菩提寺が廿日市にあるため先月の日曜日にはそのお寺で義父の13回忌と義母の3回忌をかねての法要を執り行ったというほどのなじみがあるところなので本当にわくわくする。

 美央は、東京での学生時代一途に愛して、男女の関係を続けていた時期もあり、結婚を考えていたのにすげなく振られた湯川と広島で十年ぶりに再会する。
 一夜を共にしたが、そのあと湯川が別府湾で投身自殺したことを知る。再開したとき二度と離れない決意した美央に遺されたのは、真珠の指輪だった。
 なぜ彼は自殺したのか。指輪は誰のものなのか。
 美央は、別れる原因になった銀行の支店長婦人の令子を訪ねてそれを探ろうとする。
 しかし、湯川の無二の親友勅使河原より、湯川が一番愛していたのは美央だと知らされる。
 一途に1人の男性を愛し続ける女と、性の欲望のままに自由奔放に生きる対照的な二人の女性を描くサスペンス。

 でも、安芸の宮島をめぐる歴史の叙述は、さすが『平家物語』をテープによって何度も聞いて身に沁み込ませているという見延さんらしく生き生きとして楽しめる。


この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
| メイン |