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『陽炎の門』
2018/01/17(Wed)
 葉室麟著 『陽炎の門』 講談社文庫、2016年発刊を読みました。
 『山月庵茶会記』にも登場した架空の6万石を有する黒島藩におこる出来事です。
 桐谷主水は家禄が50石の家に生まれますが、両親を早くに失い天涯孤独の見でありながら、苦難を乗り越え37歳の若さで執政に推挙されましたが、最初の登城の日から、冷たい目で見られ、あてつけに嫌味を言われ、自分はみんなから嫌われていることがわかります。
 彼は、以前、藩主への落書をかいて切腹を命じられた友人でライバルでもある芳村綱四朗の介錯を仰せつかったことがありました。その落書の筆跡について自分は綱四朗のものだと思い、そのことを認めて綱四朗が切腹に追い込まれたことでいつも苦しみ負い目を感じて生きてきました。そして、罪を犯して切腹させられた綱四朗の娘由布の養父作兵衛から由布を嫁にと頼まれ妻にしていました。
 執務についていたとき、江戸にいた綱四朗の息子喬之介が父の筆跡ではないという証拠をもって父の敵討ちを藩に願い出たことについて評定があり、全一致で証拠を見てと、認めることになります。
 その証拠について調べていた主水は、だんだんに、綱四朗が書いたという落書からして藩主の罠であったことがわかってきます。藩主がもともと人をいたぶって楽しむ悪癖を持っていたことに気づき、藩内でそれを暴く場面を設定し、藩主の言いなりになっていた執政者たちの目を覚まさせ藩主を押込めにし隠居させようとします。しかし、闇番衆の与十郎が藩主をその場で切り捨ててしまいます。
 三か月後黒島家の親戚筋の河野家4万石三男を藩主として迎え、もと藩主の死は幕府に届けられ、桐谷主水はまた一段出世して次席家老の補佐役になるという話です。

 みどりさんから送っていただいた8冊の本のこれが最後になりました。すべての本が、江戸時代のものでした。
 偶然のことですが、昨年、4月の終わりころから、古文書の解読を近所の加川さんに、火・木・土と、週3回もお宅にお邪魔して学んでおりました。
私たちが古文書というのは、大体江戸時代を中心としたものです。そのなかの、貝原益軒の「家道訓」と、芸備藩の役人が書き記した「理勢志」でした。
 「理勢志」は、ある役人が書きつけていたものを、後任の人だと思える人が、これは役立つと思って「理勢志」と名付けて書き写して、今に伝わったものです。内容は、税の取り立ての考え方と施行法、が「租・庸・調」ごとに書かれてあります。また産物、米相場、座頭などについて、そして、八つの郡の地形や気候、交通、納税の成績、人々の気質、国境の争い事やそれまでの一揆などについて、さらに特殊な人事異動、役職の仕事内容の変更などが記録してあります。
 ちょうど暮れから正月休みにかけて、これら江戸時代を背景とする藩政を担う人たちや、文芸を高めた人たちを題材にした物語を描いた本をみどりさんに8冊も送っていただき読むことができました。
江戸時代を、江戸時代に書いた文章と、ミステリー的なものとはいえ時代考証がしっかりなされて現代に書いた文章とで、より具体的に深めることができたように思えます。
 12月23日66歳で著者の葉室麟氏が亡くなられました。
 御冥福を祈りします。

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コメント
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 寒中お見舞い申し上げます。
あれだけの単行本を一ヶ月しないうちに読みきるとは、ただただ羨むようなパワーです。それも家人のように次々求め、読み捨てなら出来そうに思いますが、あら筋や感想などをも一気に記すのですから、驚くばかりの読書家ですね。私は(今年こそは)と強く思った読書への気持ちは続いていますが、一冊読み終えるにも時間がかかり過ぎてしまいます。どれを選び、どう読み進めるかは各自の違いが有りますから、比べたりはしませんが、此れからもあかね様の読後感を楽しませて戴きます。ありがとうございました。
2018/01/22 12:05  | URL | みどり #-[ 編集]
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 このたびは、本当に早かったと自分でも思います。
 みどりさんのご主人がこれほど読まれた理由もわかります。
 吉川英治や山本周五郎、司馬遼太郎などはこのペースだったかもしれません。読みだすと止まらないのです。
 おかげで裏山散歩と古文書、小泉八雲はお預けでした。若いころは気づけば財布にお金がない、お米がない、最悪ガソリンがない、と大慌てしたことが2度くらいあります。今は主婦の座を夫に奪われて久しいのでブログも書けるといった調子です。
 そういえば、心配をおかけした夫も半月ぶりに明日退院して帰ってきます。
 みどりさんは創作が素晴らしいのでその方が魅力的です。
 今研究している「ある保守主義者」という作品など、

 あまさかる日の入る国にきてはあれど大和錦の色はかわらじ

という和歌一首で、その内容を言い表しています。
和歌の力強さに圧倒されています。
2018/01/23 14:58  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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