『信長・秀吉・家康の研究』 上・下
2018/02/25(Sun)
 童門冬二著 『信長・秀吉・家康の研究』 上・下 を読みました。
 読書記録を書くのと書かない本とがあります。いろいろ考えさせられる本であったにもかかわらず、この本は書かないことにしていました。それは、この本が大活字文庫ということで、約21㎝×14㎝強の本で1ページ8行・列21文字のずいぶん大きな活字の本で、老眼メガネなしで読めるありがたい本なのですが、読み終わってパラパラ見るには一つの事柄が何ページにも及び、作品を俯瞰的に見れないという難しさがあることがわかり、それでなくてもいつものまとまらない記録がさらにまとめにくい大変な本だということが分かったからです。
 ハーンの会に出席したり、ほかの本を読みかけたり、オリンピックを見るために、久しぶりで編み物をしたりしていて、この本をもとに考えさせられることもあったりして、やはり記録しようと思い立ちました。

 オリンピックで「そだねー」というカーリング女子の言葉が話題を呼んでいます。この記録を描こうと思ったきっかけはこの言葉です。
 「人と組織を伸ばす会議のあり方」として、黒田如水の話があったのを思い出したのです。如水は、息子の長政に自分の才覚は平和な時代にはいらないので、“異見会”というのを作ってみんなの意見を聞いて運営するように言います。
長政は、
 1、誰が出席してもよい
 2、どんなことを言われても腹を立ててはいけない
 3、職場における身分や役職は忘れる
ということで始めます。これによる弊害をみて、如水は、これでは黒田家は潰れてしまうと、長政を呼び、部下の忌憚のない意見を聞くことと、決定することとは違う。お前が決定してハンコを押せば意見を言ったものの責任はなくなる。どこまでも自分の為に意見を聞き、自分が下した決定には自分が責任をとるのだ。と言い聞かせ、長政を驚かせます。民主的すぎる会議の弊害を説いた故土光敏夫氏の会議についての話も例に挙げて記してあり、それと、このたびのオリンピックのメダルをとる熾烈な戦いでの話し合いの対比をとても面白く感じたのでした。

 童門冬二は、自分の作品は歴史に材をとりながら現代を書いているといいます。
 この現代とは、この作品を最初に刊行した1998年といいます。
 それを今に置き換えて考えて読み解く事が必要かとも思います。
 信長・秀吉・家康は奇しくも同じ現在の愛知県で生まれた。これは偶然の出来事ではないと言います。戦国民衆という同時代のニーズを満たすために、3人の果たした事業には、信長=旧価値観を破壊する 秀吉=新価値社会を建設する 家康=新価値社会を修正改良しながら維持する という継続・連続性があったと述べます。それぞれの目的によって部下への評価が違ってきます。
 信長について言えば、桶狭間の戦いのとき、粱田正綱がこの苦戦中の深夜、信長を訪ねてきて、部下の忍びのものを放って得たという敵の情報を伝えたことで、それまでの中間管理職の、自分が率先して危機に飛び込み「ここへ来い」というそれまでのよいリーダー像を、「あっちへ行け」というリーダシップの中間管理職の見本を感じとります。そのころ、せっかく育てた中間管理職の消耗を気にしていた信長に、その解決法を具体化して見せたからでしょう。この時信長は、彼の勲功をほめ、城を一つ与えたといいます。まさに戦国時代をまとめ上げるための時間との闘いであるが故の褒章です。
 秀吉は、チームワークを重んじる共同精神の持ち主を必要とします。秀吉は生まれが生まれですから、部下にも主人を選ぶ権利があるということを心にとめているところをこの作品では描いているところが面白いと思います。部下のモチベーションを上げる方法をよく心得ています。しかし彼のリーダーとしての長所が、弟長秀の死によって失われてしまうことを丁寧に述べているところでは考えさせられます。
 家康は、秀吉がほかの大名などと茶道具などの宝物を集めて見せびらかしているころ、あなたの宝物は?と秀吉に執拗に聞かれ、私の宝物は部下ですと答えそれを聞き知った徳川家の家臣を奮い立たせたといいます。彼の時代が、1603年の征夷大将軍となって幕府を開いて後、1867年まで維持できた江戸時代の巧妙な分断政策にあり、徳川幕府の管理は人的にも物的にも世界に例を見ない高密度管理社会とも書かれてあります。

 

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