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『薔薇の館』
2018/08/12(Sun)
 遠藤周作著 『薔薇の館』 を読みました。
 薔薇の館とは、軽井沢の小さな教会のことで、ここの司祭館が舞台の、三幕八場面の戯曲です。
 第一幕は、昭和17年4月の教会の司祭館が舞台です。
 進学した東京の大学の春休みを利用して、高志という青年がトシという女の子と復活祭のための紙芝居の練習をしています。
 そこへ、13年前、夫がイギリスへ外交官として赴任するときついて行った岩下夫人が、外務省での仕事が亡くなった夫と別荘に戻ってきており、別荘の管理をする役場勤務の田端と登場します。
 さらに、スイス人で日本に来てまだ2か月という修道士のウッサンが花作りのための畑仕事着の格好で登場します。そしてブルーネ神父がネズミ退治の白い薬を手にして、療養所から帰ってきます。夫人は彼に夫からブルーネ神父に祖国へ帰った方がいいとの伝言を伝えます。
 夫人の忠言を受け入れなかったブルーネ神父は18年2月抑留所送りになりウッサンに、自分を棄てて他人に奉仕すること、司祭館に続いている空家に清岡さんという気の毒な夫婦が来るので頼むと言って連行されていきます。
 19年9月、高志は学徒兵として徴用されることになります。それで、修道士のウッサンに聞きます。
 ≪じゃあ、ウッサンさん。教会って一体なんです。日曜ごとに、盗むなかれ、姦淫するなかれ、殺すなかれという言葉を、唱えさせるくせに・・・・。僕だけじゃない。たくさんの信者の人が赤紙貰って支那やフィリッピンに出征するのに、戦争というのは、結局人と人とが殺し合うことだと心じゃ百も承知しているくせに、神父さんも日本の教会も、見て見ぬふりをしている。・・・でも、今、ぼくにもすこしずつわかってきたぞ、日本の教会は日本人のことを少しも考えていなかったんだ。そのくせ、まるで日本人の苦しみがわかっているようにうつくしい言葉で説教をしていただけなんだ。≫と疑問をぶつけます。
 またウッサンに、夫が外交官だった岩下夫人も、夫が連行されたが、明日は東京の憲兵隊司令部に送られるだろうから、長野の司教様からドイツかスイスの大使館に釈放を働きかけてくれるよう頼んでくるのですが、長野の司教からは断られてしまいます。
 そして、高志が入隊の日見送られて汽車に乗り、途中の駅で飛びおり帰って来たため、警察に連れていかれ、5日後3階の取調室から飛び降り自殺をしてしまいます。トシは以後頭がおかしくなります。それに、岩下夫人の夫は連行された先で病死してしまいます。そしてウッサンは保護疎開という名目で留置所に送られることになり、その迎えを待っている間にネズミ退治の薬を飲んで自殺をしてしまいます。直後天皇陛下の終戦宣言がラジオで流されます。
 8カ月後、抑留生活で凍傷になり左足を切って義足をつけたブルーネ神父が帰ってきます。
 ウッサンの亡くなった部屋にひとり行き、ウッサン一人に重い十字架を背負わせたことに後悔します。そして、空き家に住まわせた夫婦で、それまで信者をからかってばかりいた夫が、信仰告白をするところへ、新しい修道士が訪ねてきて来て、幕となります。
 
 遠藤周作の保守主義は、キリスト教で教えるところの、離婚をしない。堕胎をしない。自殺をしない。そして神を見捨てない。を守ることだとどこかで述べていました。
 そのために彼は、作品の中で、繰り返し繰り返し、キリスト教に疑問を投げかけています。
 そして、自分の信仰を納得いくものにしようと試みているように思います。



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