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『沈黙「あとがき」』
2018/08/14(Tue)
 昭和41年3月30日、新潮社の純文学書下ろし特別作品の1冊として発行された、『沈黙』の初版本の「あとがき」です。
 新潮社の純文学書下ろし特別作品の何冊かは、若いころ、夫が買い揃えていたものです。しかし、『沈黙』は誰かに貸してそれきりになったとのことです。
 このたびは 同じ本がネットで買えず、違う本で読みました。
 同じ本は図書館に予約しておきました。届いてみると、 書下ろしのこの本には、著者遠藤周作の「あとがき」がありました。
 この本は、神の存在や信仰の在り方に新たな疑問を投げかけたことから、出版当初教会の一部で禁書扱いになりました。
 せっかくなので、図書館に返す前に、この「あとがき」を全文記録しておくことにしました。

≪   「あとがき」

 数年前、長崎で見た磨滅した一つの踏絵――そこには黒い足指の痕も残っていた――がながい間、心から離れず、それを踏んだ者の姿が入院中、私のなかで生きはじめていった。
 そして昨年一月からこの小説にとりかかった。
 ロドリゴの最後の信仰はプロテスタンティズムに近いと思われるが、しかしこれは私の今の立場である。
 それによって受ける神学的な批判ももちろん承知しているが、どうにも仕方がない。

 次にこの小説のモデルである岡本三右衛門について少し書いておく。本文の岡田三右衛門ことロドリゴとちがって彼は(本名、ジョゼッペ・キャラ)シシリヤに生まれ、フェレイラ神父を求めて一六四三年六月二十七日、筑前大島に上陸し、潜伏布教を試みたが、ただちに捕縛され、長崎奉行所から江戸小石川牢獄に送られた。
 ここで井上筑後守の訊問と「穴吊り」の刑をうけて棄教、日本婦人を妻として切支丹屋敷に住み、壱千六百八拾五年八十四歳にて死んだ。彼と共に布教に渡日したアロヨ、カラッソの二人も皆、拷問の後、転んでいる。小説中のロドリゴやガルベと史実のキャラとの違いのためにこの点を指摘しておく。
 また、第九章中の「長崎出島オランダ商館員ヨナセンの日記」は村上博士訳の『オランダ商館日記』から、「切支丹屋敷役人日記」は『続々群書類従』中の査祅余禄から抜粋し、書きなおしたことをここに附記しておく。
  昭和四十一年二月二十日  著  者 ≫

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