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『算法少女』
2018/08/22(Wed)
 遠藤寛子著 『和算少女』 を読みました。
 2006年8月10日第一刷発行の、筑摩書房よりのちくま学芸文庫本です。
 図書館に、その時ある遠藤周作の文庫本をすべて借りてきたつもりでしたが、すべての中によく見ると、この遠藤寛子という人の本が混じっていたという縁で読んでみました。

 まずこの作品のタイトル『算法少女』についてですが、これは、著者の遠藤寛子氏が付けたタイトルではなくて、江戸時代の安永年間(1772年から1781年)出版された本で、作者は、三上義夫の研究で、千葉桃三という医師らしいこと、あき(章子)という娘が、父をてつだったのではないか、ということに落ち着いたといいます。

 その娘のあきが主人公の作品です。
 ある稲荷神社に、水野三之助が算法を説いた絵馬を奉納するところに、ちょうどこのあきが、女の子の友達といあわせて、この答えは間違っているのではないかと呟いたところから話しが始まります。この呟きを聞いた人から、ちょうど娘の算法指南役を探していた、久留米藩二十一万石の大名、七代藩主有馬頼憧(よりゆき)につたわり、指南役にとの話があり、父親の千葉桃三の友達の谷素外がこの話を伝えてきます。
 町中のうわさになり、皆が祝ってくれるのですが、娘の宇多を指南役にと思っていた、召し抱えられている関学派の藤田貞資がこれを知り、殿様に流派が違うと異議を申し立てます。殿様に、あきと宇多が呼び出され、その場で問題を出されます。これは二人とも直ぐにできたので、殿様は持ち帰って誰に教えてもらって教わってもいいが、そのことをよく理解していたものを採用することにしました。その答を、出すのに難癖を付けられたので、あきの方から指南役を断ります。これへの応酬もあってか、谷素外は、費用は出すからといって親子で算法の本を出版することを勧めるのです。

 父親の千葉桃三は医師でしたが、貧しくて困っている人を診察して助けるのでお金にはならず、母親はいつも困っています。あきは父親を手伝って、患者のところへの使いをしているとき、木賃宿の松葉屋に行き、そこに宿泊している子どもたちと仲良くなり、九九も知らないことを知り教え始めます。それを聞きつけた町の子どもたちも教えてほしいと言ってくるようになり、その保護者が、お礼をしてでもということに発展し、お金が入ってくるようになりました。いろんな人を知るようになり、そのなかのひとりが追われていて、あきに、書面を頼みこみます。それは、久留米藩の国元で一揆がおこり、それで、捕えられている人の赦免を藩主に要求する書面でした。

 そのことを知って、それまで算法の本の『算法少女』を殿様に差し出すよう谷素外に勧められるのを断っていたのですが、あきはその書面を本の間に挟んで差し出すことにしました。
 谷素外につれられて屋敷にいってみると、手毬を持っている宇多に出合い、手毬の大好きな宇多と気持ちを通じ合わせ二人で手毬で遊んでいると殿様に呼ばれ本を差し上げます。殿様は書面が挟まれていることに気付き急用ができたといって席を外し、あきと宇多は茶菓に預かり、のち、捕えられている人をおいおい赦免することが言い渡されるという話です。

 この作品のなかには、算法の歴史について書かれているところがあります。
 万葉集の時代時代にはもうすでに九九があったということで、「しし」と読ませるところを十六と書いているのがあったりするというので、山部赤人の長歌
 やすみしし わが大君は
 み吉野の あきつの小野の
 野の上(え)には 鳥見(とみ)すえおきて
 み山には 射部(いめ)たてわたし
 朝狩りに 十六(しし)ふみおこし
 夕狩に 鳥ふみたてて 
 馬なめて みかりぞ立たす
 春の茂野(しげの)に
( わが大君は吉野のあきつの小野の野のあたりに鳥見を配置し、山には射部を一面に設け、朝の狩では、猪をふみたて、夕の狩では鳥を追いたて、馬を並べて狩をなされる。それは春のしげった野のことである)
の例が挙げられています。

 また、中国では四五〇年ころ、祖冲之(そちゅうし)という学者が、3、1415926まで精密な数を出していたことや、 現在のような表記法は、安永年間のころオランダを通して伝わってきたこと、などとても興味深く読みました。
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