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『星と祭』 
2021/04/19(Mon)
 井上靖著 『星と祭』を読みました。
 1975年、角川文庫本で、616ページの文庫本です。

 中級の貿易会社の社長である主人公の架山洪太郎は、妻の冬枝と娘の光子と暮らしていますが、先妻の貞代とその娘みはるが京都で暮らしていました。
 先妻の貞代は勝ち気で人の後ろに立つのは我慢できない性格でした。みはるが2歳のとき離婚し、みはるは洪太郎の母親が手放しませんでした。
 洪太郎は離婚後1年して再婚したため母親はみはるを連れて郷里で暮らしていました。その郷里へ、、しばらくしてときどき、フランス刺繍で名をあげ、それなりの豊かな生活をするようになっていた貞代が訪ねるようになっていました。みはるが11歳の時、祖母が突然亡くなり引き取って暮らしていますが、貞代の兄が貞代に引き取らさせてやって欲しいと申し出ます。みはるに訊ねると母の方へ行くというので京都で母親と暮らすことになりました。
 みはるは、東京へ修学旅行や友達と来たとき、4回ほど突然洪太郎をその会社にこっそり訪ねてきたことがありました。
 そのみはるが、17歳の時、琵琶湖で乗っていたボートが転覆してしまいました。ボートにはもう一人男の子が載っていましたが、二人とも行方が知れないと警察からの連絡を受けた貞代は気を失ったため、そばにいた弟子らしき人が洪太郎のところに報せてきたのでした。すぐに洪太郎は琵琶湖にかけつけました。貸しボートの佐和山のところに宿をとった男の子の父親の大三浦と、6日間、警察や漁師との捜索をしますが遺体はとうとう見つかりませんでした。その間、男の子の父親の大三浦は息子が心中したようなことをいうのが気に入らず大三浦に嫌な感情を抱いていました。
 その事故から7年たった時から小説は始まります。
 親しい年下のアマチュアあがりの登山家が訪ねてきて、エベレストのふもとのタンポチェという僧院のある集落で、10月4日の満月を見るという計画に洪太郎を誘いました。登山家仲間の3人は、洪太郎の知り合いの画家である池野も誘っていて、5人でその計画を果たします。
 その月の照らすエベレストでの光景に、洪太郎は、生まれる意味も死ぬる意味もない、永劫、ただそれだけという感を抱き、それを通して大三浦に対する思いが大きく変わったことにきづきます。そして帰国して琵琶湖で大三浦に会ったとき、ちょうど満月だったことから、佐和山の提案で、大三浦の念願である琵琶湖で、二人の親が佐和山と二人の子供の葬式をします。

 7年間の二人の親の悲しみ苦しみが、この作品のほとんどですが、その感情の高まりが、琵琶湖湖畔の数々の十一面観音に出会わせてくれたり、エベレストのタンポチェという僧院のある集落の観月に向かわせたり、洪太郎の大三浦への嫌味に向かわせたり、大三浦と佐和山とのいさかいに向かわせたりもするのですが、最後の春の琵琶湖の月見で、三人が心を通じ合わせ、わが子二人への供養は、これまでに湖畔で亡くなった人々みんなへの供養にかわっていくのでした。

 私も少ないながらいろいろな死に出会いました。読みながら、この作品に出会えたことに深く感謝すること度々でした。


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