『風と炎と』今世界の風は
2009/01/12(Mon)
堺屋太一著 『風と炎と』 今世界の風は を読む。

 ひさしぶりに堺屋太一を読む。
 内容が重厚なだけに部分によっては、読み返し読み返し読む。

 この本は産経新聞に連載したものが1992年4月に発行されている。1992年を今と置いて読むべき書である。
 1991年の三つの出来事が、歴史的に記憶されるとしたスタンスが一点。
 20世紀を総括してもいいのではないかというスタンスが一点。

 まず、歴史的に記憶される1991年の出来事として、ソビエト連邦の共産党と連邦の瓦解。それに湾岸戦争。そして、日本でのバブルの経済の破綻をあげている。

 レーニンは民族文化にも宗教や歴史にもとらわれず、万国共通の科学的社会主義による国家を建設するという理想の元に社会主義革命を起こした。
 「ソビエト社会主義共和国連邦」という国名に民族の名前も地域の名前も入れず、社会主義の思想の拡大と共に次々と全世界の国々がソビエト連邦の構成者共和国として参加してくることを理想としていた。70年間のながきにわたりこの実験はおこなわれ、多くの犠牲者と貧困を残して瓦解した。
 ひとつの体制が倒れる理由として、堺屋太一は治安維持力の喪失と、体制を支える文化への不信をあげている。そして経済的な理由で、倒れた体制は世界中にないと述べている。堺屋太一のこの主張は彼の著作のどの作品でも一貫している。そして、このソビエト連邦が倒れたのは、治安維持力の喪失ではなく、体制を支える文化への不信であると述べる。
 ソビエト連邦瓦解跡、共産党と社会主義の墓場となったロシアを訪ねて、体制を支えていた文化の実態、そしてそれへの不信のもたらした行き場のない空虚を取材している。
 2009年の今日この部分に触れると、いまの日本の自民党への国民の思いもこのようなものではなかろうかと自民党の終焉を予想してしまいそうである。

 また、ベルリンにも赴き、「ベルリンの壁」の崩壊について、東ドイツはソ連軍に占領されたために、二十世紀に起きた三つの大戦争(第一次世界大戦と第二次世界大戦と冷戦)にすべて敗戦したと述べる。
 この、「ベルリンの壁」が崩壊したとき西ドイツが東ドイツを吸収したのかと思っていたが、じつは、東ドイツを形成していた四つの州をひとつずつ吸収したというのには驚いた。この、西ドイツの考え方が、ECの統合へと繋がるというのだ。ヨーロッパでは、国境が薄れ国家の主権はECに「上納」されるばかりでなく、地域文化に「分収」されてもいるというのだ。
 この状況についても、いまの国境で分断されているもともとあったそれぞれの地域文化について、丁寧な解説とECの統合によって生じる国家の概念の変質についても語られている。
 ここでは、日本が戦前考えていた大東亜共栄圏について再び考えさせられる。

 20世紀の総括ということではもろもろのことを取り上げている。気になるのは人口爆発についてである。二十世紀のはじめには16億5000万だったが、今世紀の終わりには62億にも達するという(実際にはどうであったのか?)豊かな国では少子化の不安があるが、全体ではそんなことは問題ではないといった気がする。アメリカでの白人の少子化が進み黒人の人口爆発が共存している様子に接すると今年オバマ氏が大統領に選ばれたのも当然のことと思われる。

 世界の中の日本について、世界資源について、またいま生き残っている自由経済民主主義についての問題点などさまざまな事柄に触れていて何度読んでも考えさせられる。
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コメント
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突然失礼します。以下の文章の意味に分からないところがありますので、教えてください。

>また、ベルリンにも赴き、「ベルリンの壁」の崩壊について、東ドイツはソ連軍に占領されたために、二十世紀に起きた三つの大戦争(第一次世界大戦と第二次世界大戦と冷戦)にすべて敗戦したと述べる。

ドイツは第一次大戦、第二次世界大戦中はまだソ連軍の占領下にはなかったのではないでしょうか?

2009/01/13 11:44  | URL | shimada hitoshi #-[ 編集]
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コメントありがとうございました。
記述の通り、この東ドイツはソ連軍に占領されたために、二十世紀に起きた三つの大戦争(第一次世界大戦と第二次世界大戦と冷戦)にすべて敗戦したと述べる。は、堺屋太一の文章の抜粋です。
「東ドイツはソ連軍に占領されたために、」は 「東ドイツは第二次世界大戦後ソ連軍に占領されたために、」 となっていれば、誤解が生じなかったのかもしれませんね。
 世界史については私はほとんどわからずこの本で大いに勉強になりました。
2009/01/13 23:09  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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