『漱石先生ぞな、もし』
2009/03/16(Mon)
半藤一利著 『漱石先生ぞな、もし』 を読む。

 この書が書かれるまでのいきさつが、面白く書かれてある。
著者は、もともと昭和史をテーマに研究を進めていきたくて、そうすると、どうしても明治がわからなければならず、その研究対象のころが、漱石がはじめて『我輩は猫である』を書き始めたころから、亡くなるまでのころと重なる。それがもとで漱石のことへ寄り道をしてそっちのほうが面白くなりこの本が出来上がったという。

 この著者は漱石の長女筆子さんと松岡譲のご息女と結婚されている方とのこと。
 漱石の孫婿ということになる。
 右に漱石をおき、左に司馬遼太郎をおいているといった感じの人で私にはどちらかというと親しみやすい。

 しかし、ほんとうによく読まれているんだなと感心をする。やはり漱石の関係のひとだけあって漱石の体温を感じておられるような気がする。

 本は、けっこう自分の都合のよいように読むものだと自分ながら感心をする。
 このたびドキッときたのは、漱石が森田草平を叱る場面の記述である。
 第十話「ある日の漱石山房」のなかにある。
 森田草平が、「たがいの弱点を知りつつ、それを許しあうようでなければ、真の友情は生まれないと思います。」といったところ、漱石は言下に叱って、「それは泥棒の付き合いと言うものだ」「おれは昔から、もののわかったおじさんというものが嫌いだ。そういうおじさんは、自分が道楽した覚えがあるから、相手の道楽も許す。相手を許すと同時に、結局は自分自身をも許している。それは決して自他を改善する道ではない。真の友情とはそんな許しあうものじゃなかろう」といっているところである。
 
 いま職場で、上にたつひとが森田草平のような考えである。やさしいといえばやさしく見える。しかし、私には優しさがときに甘さに見えるのである。それによって、対象である子供たちが良く伸びるものをからしてしまうのである。励ましつつ伸ばしてやるためにはあるときは自分に厳しくなければいけない。それがいい加減なために他を許すのである。枯れていく子供たちを見るのは本当につらいことである。
 森田草平については、長塚節の『土』についての記述のところでも関連の話がある。漱石は長塚節の『土』をほめ、自分の子供にもぜひ読ませたいと述べているが、森田草平が長塚節にこの原稿料を届けるとき、こんなにたくさんのお金を届けるのだからなにかご馳走してくれるだろうと急いで届けに行った。ところが長塚節はそっくり田舎に送金してくれとただの一言。漱石と草平の対比がここにもある。
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コメント
- こんにちは。 -
こんにちは。ブログにコメントが入っておりました。ありがとうございます。こちらへも寄らせていただきます。司馬遼太郎はエッセイが好きです。「風塵抄」が好きで、以前はちょくちょくめくっておりました。私は小説はあまり読まないのでした。ご縁が広がるとよいですね。
2009/03/19 00:05  | URL | 和田浦海岸 #-[ 編集]
- はじめまして -
私のブログ「ほん☆たす」に訪問ありがとうございます。
世の中には「本好き」と呼ばれる人はたくさんいて、その人たちがまるでかくれんぼをしているようで、ここにもひとり、見つけたー、という感じでうれしくなりました。
また訪問させて頂きます。
2009/03/19 08:49  | URL | 夏の雨 #-[ 編集]
- 和田浦海岸さん -
訪問ありがとうございます。『風塵抄』は私も読んだ気がしてブログをめくってみると、一昨年の11月に書き込みをしていました。『もうひとつの風塵抄』のほうを先に読んだことがわかります。そのときはまだブログをやっていなかったようです。短歌を解するには自信がありませんが、エッセイは私も好きで短くてちょくちょく読むには私のように働いている人間にはほんとにありがたいです。
2009/03/19 10:39  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
-  -
どうぞ、たびたびお越しください。
あらためて、夏の雨さんのブログを拝見しました。私って古い記事にコメントしてたんですね。でもびっくりしました。「文化的ライフ、すごーい!」
私は田舎の図書館で並んでいる本を借りてきて読んでいるだけなので、読む本に何の脈略もありません。時々、図書カードをいただくので本屋に行くことはあるのですが、品定めをしながら読みきってしまうことが多いいので買わずじまいです。漱石は30歳過ぎて通った短大の国文科の卒論でかじったのですが、先生が買ってきてくださったり、貸してくださったりしました。その先生は私が持っていた寺田虎彦の単行本を見て「高校のころの本を大事にしているんですね」といわれました。本を捨てないから買えない。わかっているんですがの生活です。これからも新しい本の紹介楽しみに読ませていただきます。
2009/03/19 11:33  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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