『約束された場所で』
2009/06/23(Tue)
村上春樹著 『約束された場所で』 を読む。

1998年出版。

地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教信者や元信者へのインタビューをした書

今村上春樹といえば新しく出版されたなにやらという本が大騒ぎである。

そんな書があるというの図書館で偶然出会った10年も前の本を読んだ。
タイムリーではないが、圧巻であった。

村上春樹は1995年3月に起きた地下鉄サリン事件の被害者にインタビューして、1997年に『アンダーグラウンド』という本を出版する。そして、翌年オウムの元信者などを取材して、この『約束された場所で』が出版されたのだそうだ。

村上春樹の書くオウム事件! なんとなく引いてしまうこの事件の真相も村上春樹となら検証してみたいと思えるではないか。
圧巻にもめげず挑戦してみる。

目次

 まえがき
 インタビュー
  「ひょっとしてこれは本当にオウムがやったのかもしれない」狩野浩之
   ・
   ・
   ・
   ・
  「裁判で麻原の言動をみていると、吐き気がしてきます」高橋英利
 河合隼雄氏との対談
  『アンダーグラウンド』をめぐって
  「悪」を抱えて生きる
 あとがき


 この書ほど「まえがき」から最後の「あとがき」まで読んで、はじめて完結されるという本が他にあっただろうかと思うくらい全文を読まなければ身にならない書である。
 単純に言えば、8人のオウム信者だった人たちの話のどんでん返しが河合隼雄の言葉の中にあるし、そのどんでん返しが最後のあとがきにあるような気がする。

どんでん返しというのはちょっと言葉がはねているが、そのつどコモンセンスに照らし合わせて引き戻してみると、と言うほどのことであるが。

  ≪私がここで提出したいと思っているのは、『アンダーグラウンド』について述べたのと同じように、明確な一つの視座ではなく、明確な多くの視座を作り出すのに必要な血肉のある材料(マテリアル)である。≫という「まえがき」をしっかりおさえてさらにということでもある。


元信者などのインタビューを8人分も読んでいると、この人たちが、いかに純粋に解脱を求めていたかがよくわかる。彼らが体験した解脱にいたる清らかと思える道のりも、そして、事件に対する自分自身への検証と、その後の立ち直りへの努力も伝わってくる。
実際には、インタビューした内容もかなり削られているらしいが、彼らがこれだけ自分の内面についてのことを真摯に語るというのは聞き手としての村上春樹の人柄にもよるだろう。

村上春樹は、被害者の幾人かに当たっているとまったくいろんな人がいて社会ってこんなものだろうなと感じたが、もとオウム信者は大変似ていると思ったという。私も深く読めば読むほど、男性は男性で誰の話もおなじように思えるし、女性もそんな感じだ。

オウムに入信するまでの思いとしてここまで掘り下げて善とか悪とかについて考えられるものだろうかと思える。私にも青春時代はあったがここまではそのことばかり考えなかったような気がする。そして、なによりも身近にオオムの道場がなかった。

これからも起こりうると誰もが確信する事件であるだけに、そして、その解決策についても後の対談で提言されているだけに読み応えがあった。

スポンサーサイト
この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
<<『美人に幸あり』 | メイン | 『人間万事塞翁が丙午』>>
コメント
コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top
トラックバック
トラックバックURL
→http://yamanbachindochu.blog106.fc2.com/tb.php/227-c7fbb83d

| メイン |