『泣き虫なまいき石川啄木』
2009/11/20(Fri)
 井上ひさし『泣き虫なまいき石川啄木』

 この作品では、石川啄木の家庭のなまの声が聞こえてくる。
 石川啄木の生活ぶりがストレートに伝わってくる。
 お金を誰からどのようにして借りたのか、またかしているものはどのような気持ちで貸したのかということも、生々しく描かれていて説明も解釈も必要としない。
 
 一貫して曹洞宗である石川家の一と節子の家庭の貧しさを描いているが、あるとき、幸徳秋水の「天下万民安楽」という言葉に心酔した石川一と金田一京助(国学院講師で、いま又東京帝国大学の講師の口がかかっており結婚したばかり)との間で意見の相違があり仲たがいをする場面での啄木の妹光子の言葉が二人を唖然とさせるところがおもしろい。 
 ≪光子 それにね、兄さん、どんなにいい時代がやってきたところで、すべての人間が仕合せになれるとは思えないの。どんな時代にも不公平なことが起こるに決まっている。そこでそういう不条理は死んでから清算されるの。だから死後の世界に、天国、煉獄、地獄があるのよ。

  一 僕にこのまま貧乏でいろというのか。貧乏はいいとして、貧乏につきものの家庭のイザコザと死ぬまでつきあえ、というのか。
  
  光子 お金持ちのところにだって家庭のイザコザはあるは。家庭はだれにも遠慮せずにそれぞれが身勝手のいえるところ。そのことがよくわかっていて、相手の身勝手にも耳を傾けてやり、自分の身勝手もさらりという、とそういうことになっているうちはいいけど互いの親兄弟や親戚が口をだしてきたりして、それぞれ自分の身勝手にこだわり始めるのね。そうして家庭を、自分の言い分が勝っただの、負けたからこの次に仕返ししてやるだのという血みどろの戦場にしてしまうんだわ。たいていの家庭がそう。だから賢者は家庭を持とうとしないのよ。≫

 以前人形劇をやってその台本を手がけたことがあったが、きれいごとの説明を台本に載せようとしたところに、真実にふれ共感を得るようなものができなかったのかなーと反省する


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