『逃げていく街』のⅠ 
2010/02/28(Sun)
 山田太一 著 『逃げていく街』のⅠ を読む

 1998年発行のエッセイ集
 活字が小さいので引いてしまいそうだがゆっくり読み始める。
 まずはⅠ。
 
 Ⅰでは「大学のころ」が印象的だった。
 8人兄弟で自分ひとりだけが大学に行くが、そのことを父親が喜んで入学式の日にすき焼き屋に連れて行ってくれる。そこで仲居さんに

 ≪「こいつはね、早稲田大学」≫

 といって自慢する一方で

 ≪「だからって、おもいあがっちゃいけない。財産家や政治家の息子じゃあない。結局のところ、お前に関心を持っている人間なんてものは、ひとりもいない。お前の入学を喜んでいるのは、死んだおかあちゃんと、おれだけだ。他人は関心ありゃあしない。世間てえもんは、そういうもんだ」≫

 というくだり、なぜか『スペンサーの山』(アール・ハムナーニ 著)を思い出し胸が熱くなる。

 「私が小説を書き始めたころ」のなかの

 ≪どういうものか高校生の頃、石川淳の随筆を繰り返し読んだ。・・・・こんな調子をかっこいいと思ってしまい、文体模写をして学校新聞とクラス雑誌に短文を書いたりした。氏の小説にはなんの関心もなかった。ただもう随筆の文体をいいと思い、まったく高校生というものは(一般論にしてはいけない。あくまで私の場合はだが)呆れるような視野狭窄、偏屈、思い込み、不自由不器用のかたまりで、その文体で小説を書こうとしたのである。≫

 こんなことをするのは自分だけではないのだなと私も高校の頃を思い出す。物事の見かた感じ方についてはなぜか寺田寅彦に似せようとした。そして、卒業文集には石川啄木の文体を真似た。その書き出しが何年もたって武田鉄也の『送る言葉』に似ていて、苦笑いした。そんなことを恥ずかしく思い出す。
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