『司馬遼太郎 全講演 第1巻』
2011/01/26(Wed)
『司馬遼太郎 全講演 第1巻』を読む。

 すこしまえ、本を読むことをしばらく止めてみようと決心した。いったん本を読むことを止めようと思ったからかいざ読もうとすると、ぜんぜん前に進まなくなって、読書習慣のない人が本が読めないというのはこういうことかなーなどと思ったりしていた。
 ところが図書館でこの本を借りてきたら、分厚い本ながら一挙に読めた。私って、やっぱり司馬遼太郎が好きななんだと思う。
 何日もかけて薄っぺらい新書本を半分くらい読んで投げ出してしまったのは、江口なんとかという人の『地域主権型道州制』という本なのだが、原因は本の構成が悪いのではないかと私のような素人でも思ってしまった。
 まあとにかく、司馬遼太郎を読んで自分を取り戻せたような、気分になれてほっとしている。

 この講演集は1964年~1983年の講演を集めたもの。

 講演において、文明の原理についての話がよく出てくる。たとえば

 ≪中国とは何か。ひとことで言うとすれば、一個の文明としか言いようがありませんね。
  大文明を築いたといえばインドがそうです。、ヨーロッパのキリスト教文明があり、中国には儒教文明が成立しました。そこには文明の原理が必ずあります。
 ところが、日本は文明原理というものと関係がありません。おそらく世界中で日本だけと言っていいかも知れません。これが日本人の悲劇であり、喜劇でもあります。いいところでもあり、悪いところでもある。・・・・・
 ひとつの民族が社会をつくりあげるときには、原理が必要になる。原理とは、キリスト教だったり、儒教だったりですね。その原理によって人間を飼い馴らし社会を作り、国家を作る。ラバをつくるようなものであります。
 人間というものは、そのままにしておけば猛獣であって、人間ではない。原理によって飼い馴らすことで初めて人間になるんだ。そういう考え方がありますね。≫

 といった具合だ。

 その原理になる、イデオロギィー・思想はフィクションである。うそでひとつの国家をつくったりうそで社会をつくったり社会の統一を維持したり、社会の安寧を維持したりするためには、思想の取締りをやらなければいけない。ということで、イデオロギーはそんなに尊敬するには及ばないと述べている。相対して合理主義については

 ≪合理主義の定義は難しいのですが、要するに、ものを見る目が厳密なリアリズムで成立しているということです。・・・・その合理主義は、商品経済がつくりあげる。商品経済のないところでは合理主義はできあがらないんです。≫

 いろんな講演でこのようなことを話されているのを読みながら彼の小説を思い起こすと、時代時代にどんな原理が働きどんな弊害がでたかという問いかけのような気がしてくる。

 『坂の上の雲』もときの外務大臣小村寿太郎が、東京大学工学部を出てアメリカで造船所の職工になっていた青年に「ロシアと戦争を始めるという話を聞きましたが本当ですか。ロシアのような大きな国と戦争してどうするんですか。滅びるじゃありませんか。しかも、日本政府というのは文無しじゃありませんか。お金を全部、借りようとしているじゃないですか。」と聞かれたとき「日本というのは小さな国でこれは会社なんだ。国家というより会社みたいな国なんだ。資本金がわずかな会社で、ほとんど能率も上がらない会社で、カネのない貧乏会社だ。この貧乏所帯というものは一生懸命働かなければ仕方がない。ロシアがやってきて、これ以上の重圧を加えたら、もうどうしょうもない。一か八かではないが、ここはとにかくやらなければ仕方がないんだ。事態がここまできた以上仕方がないんだ。働いた後で、また借金を返せばいいんだ。それは何百年かかっても返さなくては仕方がない。そういう国なんだ。つまり、自転車操業のような国なんだ。」と答えるくだりがあり、このようにもともとは日露戦争の事態をリアルに捉えていたのだが、ロシアが自滅してくれたために世界中がそして日本中が日本は強いといい、日本人がそれを誇りにしだしたところからフィクションがつくられ始めていく。
 
 


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コメント
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芥川賞作家宮本輝の「オレンジの壷 上・下2巻」
その上の110ページです。日露戦争はイギリス・米国VSフランス・ドイツの仕掛けた、代理戦争だ。日露戦争の日本の戦費の半分はイギリス・米国・ドイツの資本。ロシアの戦費の三分の一は、フランス・ドイツの資本とあります。ドイツは両方に資金援助して、イギリスとロシアの対立を望み、フランスを孤立化させようとしたと書いています。それから第一次第二次世界大戦に進むというようなことが書かれていました。これをどこかに書き留めていたので探していて、やっと見つかったので報告します。
2011/02/03 16:13  | URL | かわぐちえいこう #-[ 編集]
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 ご報告ありがとうございます。
 『坂の上の雲』では何巻でしょうか、 当時ロシアはユダヤ人に対して犬猫以上にひどいことばかりしていたのでどうかそんなことはやめてくれと、その度にいくらお金を支援してもやめない、そのロシアを小さな日本がやっつけてくれるならと、誰だったか時の大蔵省の人がヨーロッパに国債を売りに行った時、ユダヤ人の金持ちが半分を買ってくれたというくだりがありました。そのことを日本に帰って高橋是清に報告すると、この前テレビの『坂の上の雲』でも少し触れていましたが彼がアメリカで奴隷に売られたときに体験した人種差別の話を聞かせ、よく理解できると答える話がありました。また、日本がその資金を一部亡命しているレーニンに送って革命を起こさせ日露戦争どころではない状況にさせていくのですから、ヨーロッパのことはよくわからないのですが、しかし、この辺のところが、日露戦争のころには、日本は国際法にのっとった戦争をやりながらも小村寿太郎を中心として外交能力があったということです。
 宮本輝、楽しそうですね。
 私は2年間の文学部ではありましたが、文学は苦手というよりセンスがないのでしょうね。宮本輝は、なんだかヨーロッパのライン川をさかのぼるか下るかのあいだの恋愛小説のようなものを読んだきりです。
 以前、自分たちが立ち上げた「文学講座」では、最初講師が作品を指定しておられて、途中受講生の好きなものをといわれたとき宮本輝の要望があったのですが、先生が大学を追われるという事件があってそれきり講座もなくなってしまいました。その先生の下で講座が続いていたら、少しは文学がわかるようになっていたのではないかと思いますが。。。
2011/02/04 10:17  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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