『みみをすます』
2011/08/21(Sun)
谷川俊太郎著著 『みみをすます』 を読む。

詩集を読むことはほとんどない。
私にとって詩はむつかしく敬遠してしまう。
たまたま職場に老眼鏡をかけないでも見える大きな文字でつづられたこの詩集があった。
開くとすぐに

≪みみをすます
 きのうのあまだれにみみをすます

 みみをすます
 いつからつづいてきたともしれぬ
 ひとびとのあしおとにみみをすます

 ・・・・・・・・・・・・・・・≫

ちょうど司馬遼太郎の『ひとびとの跫音』という本を読んでいた。
江戸の末期松山藩に加藤恒忠という漢学者がいた。早くに父親をなくし小さいながらも戸主である甥の正岡子規の後見人でもあった。加藤恒忠が藩主に伴ってヨーロッパにいき、ベルギィー滞在中に生まれた三男の忠三郎が子規亡き後正岡家の養子になる。その忠三郎は生家をきらい、正岡家にもなじめず、それでも精一杯養子としての任務を果たす。そんな忠三郎ももなくなる。保管のよい正岡家の人々のことを残された書簡や短冊などを忠三郎の未亡人のあや子からも聞くという内容と、この詩の
≪いつからつづいてきたともしれぬひとびとのあしおとにみみをすます≫という文言が耳に吸い付くように聞こえてきたのだった。

この詩は16ページもつづいて、さいごに
≪みみをすます
 きょうへとながれこむ
 あしたのまだきこえない
 おがわのせせらぎにみみをすます≫ となっている。

そのほか「えをかく」・「ぼく」・「あなた」・「そのおとこ」・「じゆうにつき」がある。

よくわからないけど、どの詩も太古の昔、どこへ続くとも知ることのできない未来。
せわしいせみの鳴き声の中で、そんなことをじっとみみをすましてきいている。
そんな感じのすてきな詩集だった。

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コメント
-  -
今朝一番の仕事は、町内の未亡人に頼まれた、スズメバチの駆除です。業者に頼むと1万5000円ほどかかります。町会長に頼むと無料です。私の町内会は新八幡町会なので、ハチが多いのです!
「みみをすます」すべてがひらがなというのも迫力があります。とても感動的な詩です。
最後にもう一つ付け加えてみました。

みみをすます
にほんじゅうに
せかいじゅうに
ふいそそぐ
ほうしゃのうのおとに
みみをすます
2011/08/22 07:46  | URL | かわぐちえいこう #-[ 編集]
- えいこうさんへ -
 最後に付け加えられた詩も、すごい。それ以上に迫力があります。音なき音、声なき声、に心を傾ける。えいこうさんも本当に詩人ですね。活力をいただけます。
 そして、未亡人の方のお力になってあげる。人助けができるえいこうさんがうらやましいです。私も未亡人になったらどうしようと心細くなることがあります。山姥を目指していると自分に言い聞かせていますが、だんだんその気力も体力も疑わしくなってきました。自分の目の前のハエを追うのが精一杯です。
 この詩を読んで思いました。先に勤めていた職場は渡り廊下のおおきな黒板に1ヶ月間毎月ひとつづつ詩がかかれてありました。4年間いたので意図することなく48の詩を何度も読み返していたのでした。谷川俊太郎の詩も時々ありました。こういうことってよかったんだなって。 
2011/08/22 21:15  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
-  -
 谷川俊太郎氏の作品は親しみやすい詩が多いですね。
沢山は知りませんが、子ども相手に編集された詩にも、大人が読んでも充分な感動があったことを思い起こしました。

 今、部屋の外は真昼でも実に静かです。
蝉だけが東南の窓から、北西の窓からというように包囲網を巡らせ、鳴きつのっています。
ほんの数日続いた涼風は何処かへいってしまいました。
耳を澄ませても風の音はありません。
聞こえずとも、聞こえるものって、心の心象風景でしょうね。
 もうじき9月に入ります。
秋には、あかね様に見習って、少し読書量を増やさなければと省みています。
どんな作家の、どのような足音にぶつかりますでしょうか、楽しみです。


2011/08/23 13:34  | URL | みどり #-[ 編集]
-  -
 みどりさんの東北震災の詩も思いと深く重なりました。
 震災のことを考えると涙が出るばかりで、原発のことをふくめてここまでの地震と津波でなかったらとも思い、どうしてこれほどのことが起こったのか、みどりさんの詩の最後の行に他に何があるのだろうと思うばかりで答えが見つかりません。
 30年無事過ごしてきた職場でも、こんな想定外のことが起こったらどうやって子どもたちを守れるか、日々身の縮む思いで具体的で実務的な話し合いをします。

 正岡家の養子の忠三郎という人には初めて知りましたが富永太郎という詩人の友達がいました。夭折するのですが、短い期間に数字はうろ覚えですが170通ぐらいの忠三郎にあてた書簡があり、富永太郎全集編纂にそのなかの50通以上の書簡が掲載されているそうなのです。この全集をながめてみたいと思いました。
2011/08/23 17:08  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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