『風塵抄』
2007/11/01(Thu)
司馬遼太郎の『風塵抄』続きを読む

2 言語の魅力

 ここの文章は司馬遼太郎の人柄を表していて感じ入ってしまう。

 山岡鉄舟と円朝とのエピソードをひいて、≪話し手の正直さこそが、言語における魅力を作り出すということである。≫と言い切っているところにそれを強く感じる。

 司馬遼太郎は、『円朝全集』(噺家の速記録)を持っていると述べている。
 これはもしかして二葉亭以前の日本で最初の口語文であるかもしれない。


3 正直
 
 2 に引き続き「正直」について述べてある。
 為政者の「正直」についてである。
 江戸時代儒教が為政者の哲学であった。
 もともと儒教の徳目の中には「正直」という概念はなく、後に経済社会の発達によって、「信」という徳目が加わってきたということだ。
為政者は「民は由らしむべし、知らしむべからず」が基本で、「正直」である必要はなかった。
 しかし、立憲による政治では「正直」でなければ第二次世界大戦の時のごとく国を滅ぼすと述べている。
 また、明治期、日露戦争終了までの為政者の正直度は高く、明治の奇跡と呼ばれる時代を作ったともいう。
 そういえば『坂の上の雲』で、何度か司馬遼太郎はそのことに触れている。


10 受験の世  11 やっちゃん

 この二つの文章は、同じ趣旨の話を違った書き方で言っている。。
 この両方の表現がじょうずにできるところが、小説家としての深さと幅を持たせている所以かなとまたまた感じ入る。

 10 の文章はこのところ1・2年前から問題視されだした「格差社会」を、21年前に見通しているかのごとき内容である。
 学校教育の悪い部分が拡大の一途をたどることを憂いている。
 江戸時代から明治のかけての塾のようなものが「人」を作るのではないかと懐古しているが、今そういった塾が都心部からはやり始めたのもそこに気付いた人たちが、増えてきたのではないかという気がする。

 11 の文章は味があっていい。最後にいい女のお手本が載っている。


16  電車と夢想

 ここの文章も10・11につながるような内容で人生を電車に乗る人と乗らない人。現代のフリーター現象を予告していて感心する。


ブログを書いていると読み進めないので一気最後まで読み終える。

 司馬遼太郎は、1976年(昭和51年)『土地と日本人』という本を出版している。この本を読んだ頃、私は彼が自分の考えを強烈に主張している本に始めて出会ったような気がしたのを覚えている。
 しかし、彼の言っていることがその時あまり理解できなかった。
 それから色々な出来事が報道されるたびに、この本のことを思いだし、気になっていた。
 その本に書かれているテーマを扱った文章が、この『風塵抄』の随所に書かれてあり、やっと、『土地と日本人』で彼が一生懸命訴えていたことがよく分かった。
 わかってみると実に大切なことを言っているのだが、このことに触れた他の人の書物を読んだことがない。
 もしこの問題を解決しようとしたらどういった方法があるのだろうか。
 戦後の農地解放どころの騒ぎではない。
 しかし、司馬遼太郎の人気は大変なものだ。
 「司馬史観」というものさえ生じている。
 彼の愛読者の多くがこの主張を知らないはずはない。
 賢者の愛読者の方々彼の憂いをどうにかできないでしょうかの感を持つ。

 
56 の「新について」は紀元前1600年ころに始まった中国の古代王朝殷の湯(とう)王の補佐をした名臣伊尹(いいん)について書いてある。

 実は、我が家の床の間の賭け軸に、伊尹(いいん)のことが書いてある。
 掛け軸は、品川弥二郎の筆になるもので吉田松陰の教えが書いてある。

 この伊尹(いいん)という人はどんな時代のどんな人のことだろうと長年思っていた。
  長年の夢がかなった。

 ≪伊尹(いいん)は、「コレ スナワチ日ニ新ナリ」ということばが好きだった。徳を古びさせるな、ということである。徳とは、人に生きるよろこびをあたえるための人格的原理といっていい。≫と書かれてある。
 それに続いて湯王の話も出てくる。
 これらの話は孔子の遺言の書とも言われる『大学』という本に出ているのだそうだ。
 江戸時代の基本的な教養の書で「日新」ということばは江戸期の人に大変気に入られていたということだ。
「日新」というなの藩校も4つくらいあるそうだ。



スポンサーサイト
この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
<<『風塵抄』二 | メイン | 『風塵抄』>>
コメント
コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top
トラックバック
トラックバックURL
→http://yamanbachindochu.blog106.fc2.com/tb.php/45-17af56f9

| メイン |