『サンカとともに大地に生きる』
2012/07/06(Fri)
 清水精一著 『サンカとともに大地に生きる』を読む。
 図書館の新刊案内のコーナーで目に留まり借りてきた。
 2012年5月初版の書籍。
 著者の清水精一氏は自序の冒頭
 ≪人間にとってやむにやまれぬ欲求の中心は常に生命の座を願求していることだと思われる。≫と述べている。
そして自序の閉めが
 ≪昭和9年9月   摂津 同朋園にて精一≫
となっている。
 1888年生まれの著者、ずいぶん前に亡くなっておられそうな方。
 奥付などを見ると、著者の清水精一氏が『大地に生きる』と題して同朋園出版部が出版したものを、谷川健一責任編集『日本民族文化資料集成・1サンカとマタギ』三一書房、1989年掲載。それを定本にして、現代仮名遣いに改め、編者もなしに、ずばり著者名だけで河出書房がこのたび出版したようだ。
 書名を変更している。そのせいか、書名のサンカという言葉が本文に出てくるのは、やっと119ページ目である。
 題名によって民俗学的な執筆かと思っていたが、私から見ると、自序の冒頭に掲げたことのみに生きようとする、実践的哲学書である。
 著者は、京都帝国大学法科大学へ進んだ後、父親の命令で実業界に入って創業会社の代表になるが、人類の共存共栄を掲げた理想的な会社を目指し他の重役から反対されて去る。臨済宗天竜寺にて3年を過ごし、その後独り山に2年こもる。そして貧民屈に入り、そのあと阿倍野のサンカの群れに身をおく。そしてこれらサンカの救済のための社会事業家となる。何かに老いて刑務所で教誨師をしていたという記録があるが、没年は分からない。
さらに35歳の時、同朋園の代表として、講演をしたことの記録が残っているそうであるが、この書の記述はそこらあたりまでのことである。
 身をおくところどころでの、彼が深く感銘を受ける話は、私にも深く伝わってくる。乞食という、違った角度から社会に接している人たちに、拾ってきた新聞を教科書に、道徳の授業をやる場面などは、師範学校の先生がたまたま見学に来ていて感銘を受けているが、私にとっても、深く考えさせられる。
 彼は、家にいるとき自殺を試みたことが何度かあるようであるが、自分の富裕な生活、学歴、事業、家族をすべて捨てて、自分の道を欲求どおりにいきた。こうした人は、世の中に多々あったであろうが、その内観の記録がここにこうして現代、刊行されたことに敬意を表する。
 
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