『街道をゆく 17』 1
2012/09/20(Thu)
  司馬遼太郎著 『街道をゆく17』島原・天草の諸道 を読む。
 この『街道をゆく』は、巻によって200ページくらいのものもあれば、400ページを超えるものもある。この書は少し分厚く半分の島原だけで200ページを超える。真冬に訪れているのだが、諫早のほうから、有明海側の沿岸部を加津佐までの旅である。
 まずは、日本で一番大きな一揆となった、島原の乱。その原因となったその藩の非道でやくざな藩主の素性の説明から始まる。
 名は松倉重政、大和の出身。
 大和は王朝時代から武家社会になっても引き続き興福寺が治めていて、武家社会の到来が、室町末期になるという。その体制では農村の力あるものが税の取立てをするだけで、為政者的な倫理観がなく、武士的倫理観も育たなかったという。その農村の力あるものが、興福寺を蚕食(さんしょく)して力を得、織田氏の頃、筒井順慶が大和武士としてはじめて世間に名を知られるようになった。その重臣に松倉右近という人がいた。秀吉は有力大名を弱体化させるために家老を引き抜いて豊臣家の直参にするということをよくやっていたが、そのやり方で彼も秀吉の旗本になった。秀吉が死んだあと、右近の後を継いだ息子重政が徳川方について、関が原で目立つ演出をしてみせ、さらに夏に陣でも働き、ついに肥前島原4万3千石の大名になった。
 尖閣諸島を発端とする中国の反日デモのニュースを一方で聞きながら、この松倉重政の出世譚から、島原での自己顕示欲と中央への売り込みの説明を読んでいると、彼ととどこがどう似ているのか読み直してみないとわからないが、なぜか石原東京都知事のことが頭に浮かび十分すぎるほど睡眠をとりながら読んでいるのに、カッカしてくる。
 数万人もの死者を出したこの一揆が殲滅されたあと彼が打ち首になったときには、溜飲が下がる思いがする。
 一揆側は内通した絵師の山田何某以外は全員死ぬ。この絵師の山田何某を主人公にした大作を読んだことがあり、それが私の島原の乱についての前知識で、原城内のことは詳しかったが、一揆が終わってからのことは触れていなかったような気がする。
 一揆に参加した7つくらいの町村民が原城に立てこもって全員死ぬのである。誰もいなくなり空になった町や村に幕府は他の藩や天領から人々を入植させるのである。たとえば、お中元でいただいたりする島原のそうめんは、小豆島から入植した人たちが、この地で作り始めたものだという。いろんな地方から入植してきたのでいろんなお国言葉がつかわれていたのだろうなどと想像もする。
 そして、この全員が原城に立てこもるというこの全員という言葉には暗いものを感じる。西南戦争や佐賀の乱のときにも、参戦しないものは村八分に会うどころではなかったといい、司馬遼太郎がこれを書いた昭和54年頃でさえ、その子孫に対する扱いには異常なものがあったというのである。中国の反日デモでもそんなことがあるのではないだろうかと、今おかれた日本の窮状に思いが重なる。震災に続く東電原発事故、領土問題、こんなときにやはり大きな試練の歴史を読むとあらゆることが重なって見えてくるのが不思議な気がする。
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コメント
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私も今、司馬遼の「歴史の視点」を読んでいます。明治以降の陸軍は、冷静に検討したら絶対負ける戦争でも、それをさておいて勝てると思って戦っているだけのようです。野田首相が言う「不退転の決意」これも日本陸軍の考え方、そのものだと思います。私も世界史が好きでしたが、人間は時代が変わっていても同じことを考えるものです。だから歴史物を読んでいて、その時代に入ったような気がするのでしょうね。
2012/09/23 14:14  | URL | かわぐちえいこう #-[ 編集]
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 昆布漁本当にご苦労様でした。
 しっかり体を休めて疲れを取ってください。 
 私も。年齢的なものか、今年の暑さなのか、今年ほど体がしんどかった夏はなかったように思います。仕事をするのが精一杯でした。
 できるだけ、本を読むよりはテレビを見る生活をしようと思っているのですが、見ようと思う番組を最後まで見ることがなくすぐに眠って夫をあきれさせています。そのてん本は、目が覚めれば続きが読めるので、自然読書になってしまいます。
 司馬遼太郎の「歴史の視点」もおもしろそうですね。
 
 
2012/09/23 19:02  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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