『女人芸術の世界』
2013/01/18(Fri)
 尾形明子著 『女人芸術の世界』 を読みました。
 やはりみどりさんにいただいたキキョウの花のきれいな装丁の書です。
 副題に「長谷川時雨とその周辺」とあります。

 昭和3年7月に、長谷川時雨という人が、夫である三上於菟吉の資金提供を受けて創刊した「女人芸術」について、その創刊の創刊意向やいきさつ、そこに集まったひとびととその作品のこと、昭和7年6月で廃刊になり、新たな「輝ク」の創刊までが記されています。

 余談ですが、「はじめに」の前に精養軒での談話会でのきれいに撮られた記念写真があり、精養軒といえば、どこかでみたような・・。
 ふと、夏目漱石に出てくる料亭の名前であることに気づきます。
 やはり、大正2年12月、長谷川時雨は鴎外、漱石、信綱を顧問に6代目菊五郎と共に「狂言座」を結成、とあり自分のなじみに出会ったような懐かしい気持ちになりました。

 「女人芸術」に話をもどしますと、できるだけ多くの女性の執筆の場にと、広い心でどんな作品をも受け入れていこうとする長谷川時雨の気持ちによって、多くの女性作家が登場します。長谷川時雨のそんな気持ちを表したものに「日本橋」という彼女の連載作品がありそのなかで、
 ≪江戸っ子という代名詞は各地の精鋭な人々、その地に甘んじられず、中央に出てくる覇気満々たるの徒、つまりその時代の新興階級こそ真の江戸っ子です。≫
 ≪自然そこには闘争的のものがあります。プチブル気分は持たない。それが外面的に表われて上は粗末な着物でも下を清く、何処で倒れても準備をしておくという風になり、内面的には金銭や権勢にあゆ阿諛せず虐げられる者に同情する気持ちをつくったのです。≫
 と述べている。
 脚本、小説、自叙伝、随筆、詩、そして絵の上手な人、編集の上手な人、交渉のうまい人、会計のできる人、女性だけでその持っている能力を出し合っての創刊であったようです。
 宇野千代、円地文子、林芙美子、太田洋子、佐多稲子などの若いころにも出会えました。思えば圧倒的に男性作家の本の読者である私には、昭和初期の美しい色彩にあふれた女性たち、時代を美しく生きようとする活力ある女性たちに圧倒されながらの読書でした。
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コメント
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深山 あかね様
 この本は私が10数年属していた「読書会(つくしの会と言います)」で若い友人が選んだ本でした。
私はあかね様には及びませんが、かなり本を読みますが、遠い昔は別として、この10年余、どれもこれも読み捨てで、感想文を残すこともしませんでした。
 あかね様の読後感想文は、とても楽しく勉強になっています。
読んだ時の記憶が甦ってきました。
 古本ですのに厭な顔もなさらず、次々読んで頂けることを、心から嬉しく思います。
ご無理だけはなさらず、愉しんで下されば幸いです。
長谷川時雨は時代の先駆者的役割を果たしましたね。
「桜吹雪」という美しい言葉を創りだしたのは、この長谷川時雨が最初だそうです。
芝居の台本なども沢山書いたのです。
2013/01/19 21:27  | URL | みどり #-[ 編集]
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広島などではとても目にすることなどできない1冊のような気がします。
 ないものねだりで、女性といえば美人でありさえすれば、いきなりあこがれてしまうのですが、長谷川時雨女史も絶世の美女ということで、立ち居振る舞い、他の女性へのやさしい心配り、夫への愛情、その著作、うっとりしながら読みました。
 ちょうど、その前読んだからゆきさんの話のこともまだ頭の片隅に残っていて、古代の女性や奴隷に関する著作もあるということで、彼女が物した著書。これは読んでみたいと思いました。
 彼女の台本での芝居が当たりにあたったという文面では感動いたしました。田舎ものの私は、舞台などほとんど見たことがないのですが、総合芸術と思える芝居の台本が上手に書けるくらいの方ですから「桜吹雪」という造語もおできになったのでしょうね。
 昨年の耳の手術の入院で病院の推理小説や探偵小説、刑事ものばかりを読んだせいで、やっとそんなテレビ番組から著作を連想できるようになったとほくそえんでいる私からすれば、かたや芝居の色彩や台詞や音響などを思うにつけ、うらやむばかりです。
 みどりさんの舞姿の舞台などにも思いをはせました。

 それなのに、彼女の本心を語りつくしたという「江戸っ子」についての著述にはほんとうに意外な気が致しました。
 こうやって、もとから江戸にいた人、江戸に何かを求めてやってきた人お互いが切磋琢磨して成り立っていたのでしょうか。
 自分の性についてしみじみと味わうことのできた一冊でした。

 感謝です。
2013/01/19 22:44  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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