『からくりからくさ』
2013/01/27(Sun)
 梨木香歩著 『からくりからくさ』 を読みました。
 これもみどりさんにいただいた本です。

 蓉子は、祖母が亡くなって、祖母が住んでいたうちが空き家になったのを、母親の提案で自分もそこに管理人として住むことで他人に貸すことにする。
 アメリカから鍼灸の勉強に来ていて蓉子と英語・日本語を教えあっているマーガレット。蓉子の通っている染色工房に来ている機を織っている内山紀久。そしてテキスタイル図案研究をしてやはり機織りをしたいと思っている佐伯与希子。この4人と蓉子が祖母から受け継いだ有名な人形師の造ったらしい市松人形の「りかさん」共同生活のような生活が始まる。
 紀久の十年前亡くなった祖母のお棺桶に一緒に「りかさん」そっくりのお人形があったこと、与希子は病気のため最悪の覚悟で身辺の整理をする父親から曽祖父の兄に当たる人が高名な人形師であったこと、さらに母親の大伯母にもこの人形師との関連があるなど蓉子・紀久・与希子が不思議な宿世の縁で結ばれていることがわかり、生命の連なりを支える絆を描く。
 4人の共通の仲間として、二人の男性が、時々このうちを訪れる。
 その一人神崎は、精神的に危なっかしい人がいると、気がついてそっと上手に支えてしまう。そのために、支えられた人は参ってしまう。それで、まったく合いそうもない紀久が、彼のことを好きになってしまい、そのあとマーガレットが彼の子どもを身ごもってしまう。神崎はそのことを知ってかしらずか、トルコ方面に旅に出かけてしまい、その生存すらわからなくなる。
 のち、彼女たちは、永遠に交じり合わない唐草、色の溶け合う絵画の世界から、色が点描として屹立し集合する染色の世界を選んだ神崎が、マーガレットから、母方、父方ともにマイノリティーであることを打ち明けられ、そのことを知った神埼が個としてすっくと立っていた風情のマーガレットに惹かれ、何千年もその独自性を固持していった民族に惹かれたことを理解する部分もある。

 この書には、染色や織物など、美しさを求めながら、こつこつと手仕事をする人が描かれていくのですが、平行して、この作品そのものを、著者がこつこつと紡ぎ染色し織っているという感じで、読みながらも、時々目を落としそうになるのを、ほっとけないで一つ前から拾い上げていくというような読み方で読みすすんでいきました。
 そして蓉子の、慈しむとか、大切にするとか、尊ぶとかそういう思いのかけ方に、読者である私も包まれていきました。
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コメント
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 読後感をまとめて下さってありがとうございました。
私は10才以上年下の女性と親しくなり、読書会を続けたおかげで、自分では決して買わないような本を、買って読むこととなり、この梨木果歩さんは次第に好きな作家となりました。
10冊ぐらいは読みましたが、感性が柔らかで、空想的視野が豊かで、少し現実離れしたような感じも好みとなりました。
 あかね様が手に取って下さるか、気になりましたが、お仕事を持ちながら、よく読みこんでおりますね。
忘れたような筋立てまで、新たに教えて頂いたような気持ちになりました。当時は私も、入り組んだ人間模様に、前のページに戻って再確認しながら読んだ覚えがあります。
全体像が解ると次第に(読んで良かったわ)という感慨に浸れたようでもあり、その後の梨木果歩さんへ繋がる一歩でした。
2013/01/28 00:19  | URL | みどり #-[ 編集]
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 みどりさんから頂いたということで、ご主人の選ばれた本ではないようですし、どういうご縁でこの本に出合われたのかと、ついつい思ってしまいますが、そういうことだったのですね。
 早朝、2冊目の『西の魔女が死んだ』を読み終えて、朝の雑事と今年初めての雪かきをやりながら、梨木果歩の世界を考えていました。イギリスに留学して児童文学者に師事したということで、すこし固定概念を持ちながら読み始めたのですが、イギリスのファンタジィーと、日本人の自然回帰志向とが上手に融合され、さらに女性が産み育てる作業を経験する中で、人間の生態により深くかかわる性として、あまりにも調和を失っていく文明社会への危惧から、その回避を描いているようにも思えました。
 どの作品も、豊かな生活体験を積み重ねてきた祖母からの影響を受けて成長する姿が描かれているのですが、私は核家族で両親とも仕事に追いまくられている家庭で育ちましたから、2世代前のものを生活の中に何一つ受け継いでいません。
 私たち夫婦も、まったくといっていいほど子どもが祖母の影響を受けることがない生活を送らせてしまいました。
 「知恵のなる木」も「愛情のなる木」も「金のなる木」もないままでの私たち親子です。
 こう書き綴っていくとなんだか侘しくなってしまいます。
 こんな穴埋めができる梨木果歩さんは私も好きな作家になりました。
 この「出会い」を作ってくださったみどりさんにあらためて感謝です。
 
2013/01/28 09:52  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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