『シュガータイム』
2013/02/07(Thu)
 小川洋子著 『シュガータイム』 を読みました。
 やはり、みどりさんからの贈り物の図書の一冊です。

 小川洋子。大好きなのにどうして今まで読まなかったのだろうと自分を疑いながら読み始めました。
期待どおり。美しい物語でした。
 主人公のかおるは、ホテルでアルバイトをしている大学生。
 自分をよく理解し親身になって励ましてくれる友達真由美とその彼の森君。そして、しっくり愛し合える彼吉田さん。同じ敷地の教会で修行に励む、小さいころ背が伸びない病気になった小さな義理の弟航平。この五人は、大学野球の観戦にも出かけて楽しい最終学年を迎えようとしていました。

 3月のはじめ、最後の春が始まる。と不意に私は強く思った。

 吉田さんが、友達がお膳立てしてくれたと、かおると共に精神科に行かなければならないといいだし二人で病院へ出かけ、吉田さんの不能について知ることになります。二人にとってそのことは、なんでもないことだったのでそのまま病院へは行かないことに決めました。
 吉田さんのバイク事故のあと、しばらくの間、遠ざかっていた吉田さんから、来月シベリアの奥地の小さな町の研究所に、ある女性と、極低温における金属の性質の変化について勉強するために留学し、ハードな留学なので長くなりいつ帰れるかわからないとの紙がきます。その女性とめぐり合った経緯は、かおると行った病院から後日、彼のところに、長い間患っているある患者の対話療法のパートナーになってほしいと依頼があり、彼女との取り留めのない会話のなかでお互いがふくまれあっている関係であることを確認したことに始まると。
 その彼女への思いの中に、自分が義理の弟航平に見ている思いであることに気づくことを匂わせて小説は終わります。
その思い
≪僕自身の意識さえ届かない奥深い魂の一点に、彼女の瞳が映っています。それることなくひとすじに、僕を見つめているのです。・・・真夜中の月のようにひっそりと、僕の中にたたずんでいるのです。・・・どちらかというと哀しみに近いものです。いとしくあわれで、涙さえにじんできそうな・・・。≫
この小説を読み終わり、このような関係を認識していないけれども胸の奥に手を当ててみれば、誰にでもこのように思える人はあると感じました。しかし誰もそこにとどまらないのに、彼がその女性を選ばざるを得なかったというのは、かれが不能であるということに、自分に育てる何者もいない、学問だけだというところに意味があるように思え、人には誰もそれぞれ事情があって相手を選んでいるのではないかと思わされました。
 そんな事情を本当に美しく描いてある作品でした。

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