『空中ブランコ』
2013/02/15(Fri)
 奥田英朗著 『空中ブランコ』 を読みました。
 やはりみどりさんが下さった図書です。
 読み終わって、心が空白になりました。
 これって、読書によって精神科医の診断を受けたせい?と思われます。

 この本の主人公は精神科医です。
 伊良部一郎という精神科医のところに診察に来る空中ブランコの役者、やくざ、総合大学の医学部精神科医の若手医師、プロ野球選手、女流作家それぞれで一話、しめて精神科医のシリーズもの5話といったところです。

 シリーズ者のご多分にもれずユニークな精神科医です。こんな精神科医に診てもらうとたちどころに以前の精神や能力を取り戻せそうという安心感から読み始められ、安心してその症状と向き合えるのが読者の精神安定に寄与しそうです。

 世の中にはどんなに超能力的なものを持っている人でも神経症に悩まされるんだな。とか、まあいろんな症状があるもんだとか、病理に罹らないのが不自然と思えるほどになりそうです。
 最後の「女流作家」は、私のささいな、でも本当に自身を疑ってしまうほどの、読んだ本の題名や内容をことごとく忘れてしまうという症状をいやでも思い出してしまいます。
 この女流作家は今までに自分の書いた主人公やヒロインの職業を忘れてしまいます。新しく作品を書き始めるとき、その主人公の職業の設定を考えていると、その手はもう使ったかどうかわからなくなり、たくさんの自分の著書を読み返さなければならないという羽目になってしまいます。そうなってくるといきなり吐き気をもよおしところかまわず吐いてしまいます。

 結局、自分の渾身の作品が売れなかったために、売れる作家を目指して、気に染まない作品を次々書いていることに気づかされるのです。
 そして、渾身の作品の良さをわかってくれる少数の読者のことを忘れていることに気づくのです。
自分の中にある吐き出したいものが吐き出せないでこんな症状に苦しむことになっていたことに気づくのです。

 根本の問題を引き出さずにはおれない精神科医の対応によって、簡単に精神病が治っていくのです。
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コメント
-  -
 あかね様は、こうして読後感を丁寧に書き上げておりますから、記憶力はいいと思います。
お互いに50代頃までは活力がありましたね。
私も最近、読み止しの本を読みなおさなければ登場者の名前が混乱する経験を繰り返しています。
それでも、 この「空中ブランコ」は人物がハッキリしているので、とても解りやすく、一気に読み終えました。
 家人が永年精神病を患っておりますので、何か参考になればと思ったのですが、実生活にはあまり参考にはなりませんでした。
ただ、精神病は特定の人がなる訳ではないと言う事、誰もが罹る病の一つとして再認識したような覚えがあるのですが、其れもいまでは朧な記憶です。
 あかね様の感想がとても楽しみです。
2013/02/16 00:20  | URL | みどり #-[ 編集]
- みどりさんへ -
 誰でも罹患しうるというのは、本当に私も感じました。
 そして、早いうちの治療が大事ということも感じました。また、この精神科医が現実離れしているように、まっとうな体裁のいい治療でも治らないということも感じました。
 河合隼雄も、自分では納得できないままそうしなければ大学にいられないからそうした。と語っているのを読んだことがある様な気がします。
 我が家のお寺から送られてきカレンダーに、「人間とは その知恵ゆえに まことに深い闇を生きている」とあります。これを読むようになって16日目ですが、いつも納得させられます。知恵が自分を縛っていくことがありそうです。一度アホになって自分を見つめてみれば、悩みをとく鍵だけがそこにあるかもしれないと、感じさせられました。
 
2013/02/16 22:02  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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