『弱き者の生き方』
2013/02/18(Mon)
 大塚初重・五木寛之著 『弱き者の生き方』 を読みました。

 この書は大塚初重氏と五木寛之氏の対談集です。
 五木寛之は対談の名手といえます。
 五木寛之は、人と語ることを面授という言葉であらわし大切にしています。
 五木寛之の作品は近年のものしか読んでいないのですが、自分の過去の体験での戦争の悲惨さを語ってはいたものの、この作品ほど自分が死に逝く人の傍観者・加害者になった苦しみの心境や、引揚者であった自分への差別を語ったものはなかったと思います。
 彼は、2日間にわたってのラジオ放送で、大塚初重氏が、自分の戦争で撃沈(昭和20年4月14日)された寿山丸に乗っていて助かるときに、ちぎれたワイヤーロープにぶら下がって、自分の足にしがみついてくる人を蹴落として助かり、さらに吉林丸に乗って撃沈されて2度も漂流をした話を語っているのを聞き、対談を申し込んだというのです。
 同じように、自分の悪にさいなまされ続けて生きている人がいる。
 生と死が紙一重のなかを生き続けなければならなかった時代のこととはいえ、この重い荷を背負って生きている人、その弱き者としてそのことを語り合える人にめぐり合えたという気持ちであったことでしょう。
 ここでは、ふたりの戦争体験やそれぞれの家庭の事情が赤裸々に語られます。

 おまけに、高松塚古墳の壁面が発見されて、前田青邨邸で6人の画家によって模写されていたそうですが、そのときの思い出話のように興味深い話も再三です。

 お互い、80歳前後の年齢になって、それからの世を生きて、何を思うか。
 衝撃的であったことは、「和魂漢才」から「和魂洋才」になり、最近「無魂洋才」になっていて、精神的基盤がなくなっていて、そのことが現代の社会問題の要因のひとつとして解き明かされていくことです。
 この作品で五木寛之の言葉として、「あきらめる」を「明らかにして極める」と解しています。自分の悪をも含めた人生を「明らかにして極める」という姿勢を持つ。ということです。
 私も、若かったときほど、自分だけがつらい目に遭っていると思うことがよくありました。この書を読んでいくと、弱いとか、貧しいとか、つらいとかいう感じもどこかへいって、ただいま、生かされていること。そのことだけが認識できていきます。

 この本も、みどりさんに頂いたものです。
 何もわからず、弱いだけの自分とでも、付き合っていけるような気持ちにさせてくれる一冊でした。
 感謝して余りあるものを感じています。



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コメント
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 この本は、かなり前に志村様にもお勧め致しました。
確かあちらのブログ記事にも関連が掲載されております。
人の生き様は様々ですが、自分の隠して置きたいような負の部分を明らかにする勇気に打たれました。
私など未だに、自分のマイナス面や愚痴は言いたくないと構える方ですので、お二人の対談を読みながら、改めて人間と言う存在に思いを馳せました。 処で、話題は違いますが、霞様へのコメントが入らない時が多いのです。理由はよく解りません。
昨日の記事で、あかね様の若い時、吉永さゆりに良く似ていたとありました。
「鼻が高すぎて、自分の顔が好きになれない」とのあかね様の言葉があったそうですが(まあ!なんという贅沢な悩みでしょう)と、いつも鼻ぺちゃで引け目の多い私はびっくりでした。父親は鼻の高い容貌でしたが、私たち姉妹は皆んな母親に似ました。
 お写真を頂けなかったのが残念です。
ともかく、ご夫君があかね様を人並み以上に大切に思い、愛していることが伝わって参りました。
お互いに支え支えられながらの人生、ブログ友の皆様の記事は夫婦の在り方にも参考になっています。
 霞様に「読ませて頂きました」とお伝え頂ければ幸いです。
2013/02/19 07:25  | URL | みどり #-[ 編集]
- みどりさんへ -
夫に伝えました。
志村さんのブログも探し出せるかどうかわかりませんが読ませていただきたいです。

夫がブログを立ち上げたころは読んでいましたが、ここ、何ヶ月読んでいません。
夫には私のことは書いて欲しくないと言っているのですが書いたのですね。ムム。
鼻は高ければよいというものではないといつも言い聞かせているのですが。
私の写真なぞ見せたひには近所の奥様方にしかられてしまいます。「広島のおばあさんはこんなに汚い顔してるの」と思われたらどうしてくれるって。秘すれば鼻!?。

夫婦はお互い支えあいながら、ということもありましょうが、お互いが力量が同じというわけにはいかないような気がします。どうしても能力のあるほうがもう一方を支えることがほとんどと思います。支えられるより支えるほうが立派に決まっています。でも、そんなことを言っていたら弱いもの同士生きていけないし、淋しいしってところでしょうか。立場の弱い私としては・・・・。

2013/02/19 14:30  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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