『一瞬の風になれ』
2013/04/07(Sun)
 佐藤多佳子著 『一瞬の風になれ』3巻を読みました。
 この本もみどりさんから頂きました。
 読み始めたらとまりません。軽妙なタッチで部員と共に走ることの意味をずんずんと深めてゆきます。
 ステキな本でした。
 1巻228ページ、2巻272ページ、3巻383ページとどんどんと分厚くなってくる本の構成も、この本の内容とマッチした面白さを感じさせます。
 1巻イチニツイテ、2巻ヨーイ、3巻ドンのサブタイトルにもこの本のテンポと内容にあっていてすごい思い付きだと思いました。
 イチニツイテ・ヨウイ・ドン! で一瞬の風になるショート・スプリント選手。
 この知られざる競技の奥にある緊張を支えるメンタリティ・身体能力・技・チームワークにとことんせまっていける作品でした。
 中学時代までのサッカークラブに挫折し、高校に入学して最初の体育の授業で出した50メートル走の高記録で勧誘されて陸上部に入り、まさに陸上部初年生として、陸上部の種目を知っていくことから始まります。自分には、一緒に入部した幼友達の連のように速くは走れないが、彼よりはスタミナが十分にある。100メートルは駄目でも200メートルは十分なスタミナによる練習によって彼に並べるかもしれない。連は中学のとき全国大会で7位になっているので、到底勝てるわけはないが、全国レベルの彼と走ることで、挫折で失った夢と希望を持つことができる。
 インターハイの地区予選から始まる各大会。その一つ一つの大会で、競技に向けての体のコンデション作り、集中力、よいスタート、よい走り、よいバトンタッチ、次々と課題が突きつけられる。その課題に向かって、先輩に教わること、チームメイトと課題を共有すること、あるいは顧問の先生と相談することで一つ一つまさに身体を張っての訓練を励ましあいながら着実に推し進めていく。
 その清々しさが読んでいてとてもさわやかで気持ちがよく単純に一生懸命応援してしまいます。
 一巻を読み終えたとき最後に陸上競技の専門用語の解説がありました。早く知っていればもっと理解が深められたと思いました。
 2巻目の最期にも栄養補給や筋肉トレーニングなどについての解説で、3巻目の最期には、謝辞があり、特に未経験者の私に何年にも渡り・・・陸上の詳細を教えてくださった・・・とあり、未経験者だから、未経験者の読者にもこれだけわかりやすく書けているとわかり、未経験者だから、人間をイキイキと描けたと思った次第です。
 また、この本を読んでいて、最近の書物の進化について考えさせられました。
 二葉亭四迷の頃からか言文一致運動が起こり、正岡子規の頃、写生文の推奨がかかげられました。それ以前の文章をあまり知らないのでそのことについて深く考えたことはなかったのですが、最近になって、本を読んでいて、やたらと風景や情景が浮かんできます。これは脚本ではないかと思えるほどです。映像文一致、じつはこれはすごいことでは!と思っています。
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コメント
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 お疲れさまでした。
度々の感想文を読ませて頂き、ありがたく思います。
大事な部分への思いが、よく伝わってきました。
いつも読むだけは読むのですが、自分だけで納得してしまう場合が多く、久々に読書会を開いているような楽しさを感じました。
 スポーツには偏見がありました。
日本でオリンピックが開かれた時代にも、殆どテレビすら見ませんでしたし男児の孫を持った時も、戸惑いばかりで内心(女の子だったら綺麗な着物を作ってあげられたのに……)等と。
ところが人間、環境次第でドンドン変れるものですね。
彼らの友だちとも仲良くなり、親しみ成長する中で、男子の持つ特性や可愛さに目覚めました。
この本には、運動する喜びや走り続ける意思の強さ等を教えられながら、一方ではバスケットをしている男子に引き寄せて読む場面も多かったのです。
 あかね様と同じようで、面白くて面白くて寝るのが惜しい程の気持ちで読んだ記憶があります。
何かにひたすら打ち込める青春時代、めくるめく時代ですね。
私には二度と味わうことのできない青春時代ですが、書物を通じて疑似体験できたような、楽しい読み物だった事を思い起こしております。
 
2013/04/08 15:18  | URL | みどり #-[ 編集]
- みどりさんへ -
 みどりさんがお孫さんにひきつけて感じられるのってわかります。
 お孫さんもキャプテンをされていたということですから、バスケットボールでは、身体を鍛えたり技を磨いたり、試合運びの研究をしたりなどだけでなく、総合的な管理統括という部分も含めながら人間として大きく成長されたと思います。
 最後の試合が広島であったと言うことで、私もお孫さんのことも重ねて読めて読書に気合が入りました。
 お孫さんのことがあってから、職場で最近中学生のバスケット遊びに混ぜてもらうことがあります。まったくイロハから教えてもらって、この年ですから上達はしませんが、面白さが少しわかるようになりました。
2013/04/08 19:49  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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