『糞尿譚』
2013/06/04(Tue)
 火野葦平著 『糞尿譚』 を読みました。
 一口で言って力作。
 書くことへのエネルギィーが押し詰まっているといった作品で圧倒されました。
 志村さんのブログのうたのすけさんのコメントでこの作品のことを知り、たまたまあった蔵書のなかから読んだことがあるかもと思いながら、読みかけていた『麦と兵隊』をそのままにして、さきに『糞尿譚』を読みました。
 北九州の地方都市で、糞尿汲取業を営んでいる小森彦太郎という男を中心に、地方行政の請負業者にまで、政党政治の力学が作用し、その中で翻弄されるつらくいじらしい零細業者を描いています。
 戦前の話なのですが、請負業者の悲哀は今も変わらないのではないかと思えました。
 以前いた職場で開館時間外に、暴走族などにかかわっている非行少年の更生のために事業をやっていたことがありました。その少年というか青年のなかにごみの収集業の会社でアルバイトをしている子がいました。「来年度入札で落札できなければ仕事がなくなるので雇ってもらえない」とぽつりと言いました。収集で廻る地域の道順や収集場所もおぼえて、微妙な仕事の技も少しずつ身につけたであろうにと思ったことがありました。転勤し今の職場になって3年目、昨年度も今年度もごみの収集業者が替わりました。4月のはじめ、いつもの時間にごみ収集が来なかったので、区役所に連絡すると、本庁の担当なので連絡してみますといわれ明日には行けると業者が言ったとの返事でした。付け火など放火の心配もあるので、収集の時間帯も知りたかったのですが、聞けないまま翌日出勤して、ごみに事務室に声を掛けてくださいの張り紙をして出しておきました。声が掛かり、急に落札できて、従業員の募集をかけているのですが間に合わないのですみませんでしたとわびて、僕は営業なのですが今日は急に収集に廻ることになって、来週は何時ころになるかわかりませんと帰っていかれました。
 収集完了の書類のことで月末には事務所に声を掛けてくださるのですが、いまだ営業の方が来ておられます。昨年度の業者は、仕事が減って仕事を失った従業員が解雇されたかもしれないななどと思ったりします。こうなれば、ごみ収集作業員の職場斡旋業をやって、明るい街づくりをするしかないのかな。などと考えそうです。
 偶然夫も志村さんのブログを読んで、本屋に予約していたと『土と兵隊』の本を買ってきました。
 ところが本箱を探してみると、昭和29年発行の昭和文学全集に『麦と兵隊』『土と兵隊』『花と兵隊』『歌姫』がありました。うれしかったのは解説が井伏鱒二だったことで、久しぶりに井伏鱒二の文章に触れることができました。その中に、うたのすけさんのコメントにあった兵役についている間での受賞のことにふれてありました。引用します。
≪・・・しかし新聞に出るほどの賞与を玉井伍長(火野葦平)が貰ったので、わが隊の名誉だと喜んで、小林立会いの授与式を行うために中隊の兵を整列させた。そのとき玉井伍長が、われら一個人のために戦友が整列させらたことは心苦しいと、中隊一同の前で述べたと小林秀雄がその紀行文に書いている。また、玉井伍長が軍靴の裏を小林に見せ、この靴はずいぶん長い長い道を歩いたが大変に持ちがよいと、ぽつりと言ったと小林はかいている。なにか茫洋たる風貌の一伍長を見るようである。≫


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コメント
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 糞尿譚の本は読んでおりませんが、映画化したのではないかと思います。
伴淳三郎が、柄杓で糞尿を撒き散らす場面が笑いを生みながらも、庶民の哀歓が滲んでいたような記憶があるのですが、もしかしたら、まったく別物の話だったのか、今ではよく解りません。
最近は映画館へ行けず残念なのですが、若い時は随分沢山の映画を愉しみました。
 私には大きな偏見があり、軍記ものや戦争物は我が家に山ほどあるのですが、それは全て夫の本です。私はどうしても読む気がしません。ただそうした時でも、朝鮮の従軍慰安婦やから雪さん等の戦争によって女性が踏み躙られ、人権を蹂躙されてきた歴史には、避けずに向き合って来たつもりです。
 あかね様ご夫妻が揃って、火野葦平 氏の本を読もうとなさる姿勢に、強い意思のようなものを感じました。
毎回の読後感、納得しながら読ませて頂いております。
2013/06/05 19:37  | URL | みどり #-[ 編集]
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 映画化されていても不思議ではない内容だと思います。
 4月末から、20日くらい体調が悪くて、できるだけ、横になってテレビを見ようと思ったのですが、眠ってしまって、映画もドラマも最後どうなったのかほとんどわからずじまいでした。
 私の場合、結末がわかるのは本だけだと改めて本にしがみついている次第です。
 志村さんのブログで日野葦平は自殺したとありましたが、我が家にある本は昭和29年と42年が初版の本で、作家の年表や解説がたっぷりあるのですが、彼が健在のときのものです。
 これだけエネルギィッシュな人でも自ら死を選ぶのかとその辺がかなり気になっております。
 お正月ころから、みどりさんの読書暦の一端を追って読ませていただいているのですが、みどりさんは真摯に人生を歩んでおられるのだなと感じています。
 私は読書は、暇つぶしであったり、息抜きであったり、娯楽であったり、気分転換であったり、勉強であったり、とすべてを読書でまかなっているような人生です。
 でも、今の仕事を終えたら、脱原発のために何ができるか、身体が動く間に何ができるか、とぼんやり考えています。そういった意味ではこれからはその戦場を生きる気分でもあります。
2013/06/05 23:57  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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