『春まだ浅く』
2013/08/26(Mon)
 高樹のぶこ著 『春まだ浅く』 を読みました。

 やはりみどりさんにいただいた『光抱く友よ』に収録されている作品です。

 地方から東京に出た短期大学生の2年生の容子と、大学2年生の恒夫との恋愛を通して、結婚するまでは魂のふれあいだけの交際と、恋愛と性交にまで及ぶ恋愛について論じているといえる作品です。
 このテーマは、若い頃読んだ小説などによくあったような気がするのですが、ここまで真摯にそのことを深めて考えさせられる作品に出会ったことがないような気がして驚いています。
 結婚するまでは魂のふれあいだけの交際をと希望する容子の心情を大切にして、そこを守っている二人ですが、あるとき、容子に高校卒業以来お互い東京の大学に進学したけれど、ほとんど音沙汰のなかった貴子からすぐ来てほしいと連絡を受けます。かけつけると恋人との子を妊娠したので堕胎する費用を貸してもらえないかと頼まれます。様子を見ると住むところにも困っている様子で自分のアパートに同居させます。時々アパートにも立ち寄っている恒夫と3人で楽しく会話するのですが、恒夫がその貴子の恋人とのそれからのかかわりを見て、「だらしがないな」と言ってしまいます。彼のそのひとことで、三人の気持ちは動きの取れないものになり。「どうして、私がだらしがないの、・・・・。あなただって、そうじゃない、だらしないじゃないの。ひとの恋愛に口出ししたくはないけど」・・・から始まるこの男女の関係に関する問答が深められていくところに私自身言い知れぬ戸惑いを感じました。
 愛と情けの違いとでも言うのかよくはわからないけれど、これがわからないでは、今までの恋愛小説や夫婦の機微というようなものも理解できていたのかどうか疑いたくなってくる。
 詩人であるみどりさんが、作品の中に詩情を強く感じられたという高樹のぶこの作品。こんなところにも自分の読書に関する感性が疑われてくる。こんなところに注目しながら高樹のぶこの作品をもっと読んでみたいと思いました。
 この『春まだ浅く』の題名から、小学4年生の春、大学を卒業したばかりの先生が赴任してきて私たちの担任になられた。その先生が黒板に

   春まだ浅く 月若く        そびゆる山は英傑の
   命の森の 夜の香に        跡を弔ふ 墓標
   あくがれいでて わが魂の     音なき河は千載に
   夢むともなく 夢むれば      香る名をこそ流すらむ
   さ霧の彼方 その上の       此處は何處と我問へば
   思いは遠く たゆたいぬ     汝が故郷と月答ふ

と板書して、歌わされたのを懐かしく思い出しました。

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