『母子叙情』
2013/09/03(Tue)
 岡本かの子著 『母子叙情』 を読みました。
 作中挿入歌があります。 
 
 ≪うつし世の人の母なるわれにして手に触る(さやる)子のなきが悲しき
  若くして親には別れ外(と)つ国の雪降る街を歩むかあはれ≫

 彼女が、いまいちばん気になっていること。よろこびも、苦しみも、淋しさも、みんなパリにいる息子のことを思ってのこと。そんな切ない思いを知ることができます。夫の放縦な生活によって電気も切られてしまい暗い中で夜をすごさせた貧しい幼少時代から、一転そのような慈愛のもとに、留学できているイチロウへの想い。     岡本かの子と岡本太郎の母子叙情に他なりません。                            18歳の太郎が上野美術学校に入学した年の12月
 ≪「永くもない一生のうちに、しばらくでも親子離れて暮らすなんて・・・・・先のことは先にして・・・・・ あんたどう思います」逸作は答えた。「うん、連れて行こう」親たちのこの模様がえを聞かされた時、かなり一 緒に生きたい心を抑えていたむす子は「なんだい、なんだい」と赧くなって自分の苦笑にむせびながらいった。 そして彼女らは先のことは先にぼかしてしまって、人に羨まれる一家揃いの外遊に出た。≫
 家族は以後世界中をまわって帰国したが、以後太郎はパリに残ります。              
 しかし、太郎26歳にして、
 ≪このむす子を、自分のむす子としてより、日本の誇りとして、世界の花として、ささげなければならない運命 になるかもしれない。晴れがましくも、やや寂しい。≫
 ≪彼は自然現象中より芸術の力によって美の抽象ということに画論を立てていますが、基礎にはカントの美学が 影響を持っているようです。彼はだいぶ長い間ソルボンヌ大学でそれを研究していました。だが彼の画風は理 屈っぽいぎすぎすしたところはもうとうありません。彼の聡明な物象の把握力、日本人特異の単純化と図案化。 それに何という愛憐の深い美の象徴のしかたでしょう。私はいつも彼の絵を見て惚れ惚れとします。何といって も一番人を融かすところのものは、彼の詩人的素質です。その素質が、彼の酷しいリアリズムを神秘にまで高め ます。彼は今前衛画派の花形のうちで一番年少でありながら、一番期待と興味を持たれています。彼を見るとま ったく芸術家はテンペラメント(気性・気質)一つだという気がします。≫
という賛辞や、賛辞を受けた感想をのべています。                                            
 そのまま会わずして、翌年の年末、かの子は脳充血を起こし倒れて明けて2月17日に死去しました。

スポンサーサイト
この記事のURL | 未分類 | コメント(2) | TB(0) | ▲ top
<<「老妓抄」 | メイン | 『渾沌未分』>>
コメント
-  -
 あかね様のお蔭で、此の本を岡本太郎氏の成長を見る思いで読み進めていた事などを思い起こしました。
かの子さんの葬儀には太郎氏は日本へ戻れなかったような記憶があるのですが、もしかしたら他の方と取り違えているかも知れません。
文学者として名が売れ出しても、一方では様々に酷評された、かの子さんでした。ですが、母としての強い母性愛を持ち、息子を一人の人間として充分認めていたのだと思います。
早く、お亡くなりになりましたね。
 昭和初期の小説に出てくる形容詞などが、とても豊かで、現代とは違う魅力があり、もっと沢山学びたいと思っていた頃、仕事に疲れ切っておりました。
結局、思うばかりで満足な読後感も記さず、流され暮らしてきたような気が致します。
2013/09/05 11:38  | URL | みどり #-[ 編集]
-  -
 思い出していただいてよかったです。
 亡くなったときには、遺言により葬儀はせず、一平と新田は多摩墓地に、みずから鍬を取り火葬を嫌がっていたかの子のために土葬にしました。東京中のバラを買い集め、純白のソワレを着せてかの子の好きだった銀の靴をはかせ、ダイヤの指輪をはめ、太郎が送ったネックレスを付け、一平が死化粧をして、花々に埋もれたかの子の遺体に土をかけていきました。
 太郎は1年半後に帰国しました。
 かの子は小説家である前に歌人でしたから、みどりさんのような視点で自然や、もの・こと・人についての観察眼を持っていられたのだと思われますが、これからはそんなことも頭の隅に置きながら作品を読んでみたいと思います。
 太郎がかの子をいさめて言う言葉にもすばらしく、記録したいものが2・3あったのですが割愛しました。
2013/09/05 20:55  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top
トラックバック
トラックバックURL
→http://yamanbachindochu.blog106.fc2.com/tb.php/604-aabffaf2

| メイン |