「老妓抄」
2013/09/12(Thu)
 岡本かの子著「老妓抄」 を読みました。

 読み終えて長い時間が過ぎました。
 読み終えたとき、著者の作品にかける思いについて考えていませんでした。作品を著者が自分の体験から、何を選りだして描いたかということにだけ想いが働いていました。
 みどりさんが著者の亡くなったときについてのコメントをくださったとき、亡くなる直前、そして亡くなる2・3年前までの、著者の体調について他の資料を読み返す機会に恵まれました。

 そして偶然ですが、今朝裏山登りの途中、夫がテレビ番組を見た話をしてくれました。東北の大震災ですべてを失って、仮設住宅で暮らしておられる人で、若い人は別として60歳台から上くらいの世代の人たちが、2年半の間にはじけて人生を楽しまれるようになった。それが悟った姿かもしれないとの話です。その話を聞いたとたん、老妓の心境がすとんと胸のうちに落ちたような気がしました。
 さらに、最初みどりさんに太郎の本をいただいたとき感じた、突き抜けたような感じはこれだったのだとも思いいたりました。著者の岡本かの子は、作家になる前は大乗哲学者ともいわれて、いろんなところから依頼を受け、あちこち忙しく仏教の講演をするほどの人だったのです。

 「老妓抄」は、生活にゆとりが持てるようになった老妓が、なんとなく健康で常識的な生活を望むようになってからの生活を描いたものですが、その常識的と老妓が考える生活が、私たちが思う生活と基本的に違い、じつは彼女が生活の苦労がなくなって送った、愛人を複数同時に住まわせて夫と暮らした生活と似通っているのです。そのような生活の基盤に彼女のなにかしら悟りきった境地があったのではないかと強烈に思えたのでした。そして、体調になんとなく死の影を感じた著者が、そのような境地を老妓に題材を置き換えて描いた作品ではないかと思えました。悟った生活というようなものの実態に近づけた気がいたしました。


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コメント
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 勤務の傍ら、沢山の読書に頭が下がります。
此の中の老妓の気持ちには、一々納得するものがありました。
かの子さんが、何処となく体調の不良を感じていたという点では、少し疑問があるのですが、生存平均年齢が60歳まで行かなかった時代でしたね。
 人には個人差があると思うのですが、此処数日、低気圧の影響もあるのか極めて体調が悪く、昨日は団地で催された「N団地敬老祝賀会」で2曲踊るだけで、今までにないような脱力感に襲われ、自分の記事を書くさえ厭になり休みました。
14日夜には、此方の記事を拝読したのですが「自分の死の予感」とはどうした際に浮かぶのか・・・・・と、其の事が気がかりとなる中、肉体的胸苦しさに陥りました。
急いで始末しておかなければならない事が山積みです。
それでも反面で、何もかもが成り行き任せの暮らしで、其の時は何時なのか?と普段感じない焦りと虚無感に襲われていました。
 また必ず元気になれると思いたいです。
そうして深山あかね様の読後感に、私の見出し得なかった視点を探り、学びたいものと考えております。
2013/09/16 11:19  | URL | みどり #-[ 編集]
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今年の夏はあまりにも暑すぎました。
 実際舞踊も体力を使われることと思います。
 ご自愛ください。

 私も7月中旬1週間くらい本を読みたくないときがありました。本を読みたくないということの経験がほとんどなかったので、読みたくない人の気持ちがすこし理解できました。

 読んでも、読み捨てて記録する気力のないときもありました。
こんなとき、時間がたつにつれて、読後感がまったく違ってくることも経験しました。読んだ後じっくり考えるのも味なものだと思いました。
 この「老妓抄」がそうでした。
 
 岡本かの子はロンドンに渡った昭和5年41歳の秋第1回目の脳充血に襲われました。2回目は44歳のときです。そして、49歳の暮れ「老妓抄」が掲載された月に3回目の脳充血を起こして倒れ40日くらいで亡くなりました。
 「老妓抄」への讃辞が新聞や雑誌に出揃ったとき、彼女はやっと自分の言いたいことが理解された。自分の表現がどのレベルで、読者のつぼにはまるのかということを確信し、自分が小説家として頂点に達することができたと確信したのではないかと思いました。
 岡本かの子の晩年の小説を指して亀井勝一郎が≪女史は小説を持って「滅びの支度」をしたと≫といみじくも言い当てているとの評によって、彼女の体調と作品との関係を類推することができたように思いました。
2013/09/17 22:21  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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