『一葉伝 樋口夏子の生涯』
2013/10/23(Wed)
 澤田章子著 『一葉伝 樋口夏子の生涯』 を読みました。
 これもみどりさんから頂きました。
 読ませていただくうち、みどりさんが手放すことを迷われたのではないかと思わずにはいられない本が多く、この本も何度でも読んでいたい本でした。
 仕事柄、子どもが成長してゆく感動的な瞬間に立ち会うことが多いのですが、まさに、この本も 樋口一葉が、漢詩文の手習いから、当時発行され始めた新聞を読みはじめ、歌を習い、小説を書くための趣向・手練手管を習い、さらに、人をも世をもうごかすにたるべき小説文を書くことを教わって会得し文士として日々成長してゆく姿をたどってゆくことができる感動的な書です。
 樋口一葉は24歳で亡くなるのですが、若くして亡くなったことを改めて思い返さずにはいられません。明治から大正、昭和初期の日本文学の中に、樋口一葉はおおきな地位を占めていますが、ほかの作家たちが、名作を残した年齢はほとんど24歳を過ぎてのちのことです。
 1886年(明治19年)14歳の8月、中島歌子の歌塾萩の舎に入って、1896年(明治29年)24歳の11月に亡くなるまでの10年間、彼女の生活を取り巻く貧苦の苦労は並大抵ではありません。
この間、長兄が亡くなり、家督を継ぐことになり、父親が亡くなり、次兄の元に引越し、婚約が破談になり、萩の舎に寄宿女中同様に使用され、本郷区菊坂に転居し、下谷区竜泉寺町に転居し、荒物・駄菓子店を開業し、それをやめて本郷区丸山福山町に転居し、あげく結核に罹って半年の闘病生活の後亡くなるのです。
 そしてこの間にも、朝日新聞に連載小説を書いていた半井桃水に出会い、桃水からも家族を養うための本意ではない売れる小説の文章指導を受け、借金の申し込みを受けてもらい、作りたての同人誌『武蔵野』に掲載してもらいます。彼に熱い恋をし、それが萩の舎の人々の批判を浴びるや士族の庭訓をまもり絶交します。友人から同人雑誌『文学界』への紹介をうけ、時の文学界の新鋭作家たちとの行き来も激しくなります。のち名を成してゆく若い作家たちとの文学談義で、持っている教養と素質を基として、日に日に自分の精神が磨かれ、それが小説になってゆくさまが日記や交わった人々の回想録によって丁寧に描かれています。
 没落士族の身を売らなければやってゆけないほどの貧困のなかで借金に歩き回り、恋しい人への想いは士族の矜持を守り、持てる者の心のうちを読み取りながら生きていく生活。そのような生活を強いられている自分をとりまく社会へ目を向け、同じ境遇、さらに貧しい人への同情、そういうなかに育って行く子どもたちの人生の目標や将来への展望の形づくられかたへの嘆き、そういったモチーフを書き綴ったのが『たけくらべ』です。
 この本に出会う前には出合えなかった樋口一葉の『たけくらべ』。やっと名作を名作として読みとりあじあうことができるような気がしています。

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コメント
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 毎回、楽しみにしながら読ませて頂く読後感です。 
例え遺して行っても、娘二人が読んでくれるとも思えない本です。歌も小説もまるで違う世界のものを求め、愉しんでいる様子なのです。
ですから、あかね様のように文学書でも時代小説でも、心を込めて読んで下さる方に出会えました事が、嬉しい限りです。
その上、海綿がたっぷりの水を吸収するように、細かい点まで目配りしながら読み通し、読後感まで記録して下さることは、二重三重の喜びとなっています。
ご自分で買ったり借りたりしたい著書も沢山あると思います。
それを後にして、私の押しつけがましい行為を受けて下さることに、感謝致します。
本もきっと喜んでいると思います。
 本棚には連れ合いの本が厭になるほどありますが、お互い好みが違い過ぎます。彼は本を手放さないタイプですが、私は先行きを考えると、今が手放すチャンス!と思っております。
時には「この方に此の本を読んで頂きたい」と強く思う時もありますが、悲しむべきことに、本を読む暇がないと言われてしまいます。
 それに致しましても読後感のまとめは難しいですね。
先日、岸恵子氏著作の「わりない恋」でしたか、まわして下さった友人がおりましたが、ちょつと本音では語れないような際どい箇所もあり、読後感を語ると言う行為には、自己を語るに等しい部分が多々あり、結局ブログには書けませんでした。
そうした部分もさらりと書けたらいいのですが・・・
言い訳のようですが、本は読み捨ての場合が圧倒的となってしまいました。
 ところで句作は続けていらっしゃいますか。
子どもたちの育つ様や周りを視る目、期待しております。

2013/10/24 10:26  | URL | みどり #-[ 編集]
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 俳句も短歌もうまくいかなくて困っています。
 これだけ考えて、みどりさんのブログや本ですばらしい作品を読んで、師匠もいながらできないのでは・・・・。
 一葉が萩の舎で上流家庭の人々を知り、越して一時期吉原界隈に住んで、社会のありようを告発してゆく小説に、職場の子どもたちの立場が二重写しにもなり、一時代の一幅の絵のような作品と感じていたものが普遍性をおびてかんじられるようになりました。衣食住子どもの養育をまかなっている女性こそが告発をしてして行かなければと友達のそんな活動にもついのこのこと付いていった第三日曜日でした。
 みどりさんの健康気になります。
 ご自愛ください。
 ※昨夜からパソコンの調子が悪くてやっと夫が直してくれました。みどりさんと更新できなくなるのではとひやひやでした。 
2013/10/25 11:07  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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