『見上げれば星は天に満ちて』
2014/09/20(Sat)
浅田次郎編 『見上げれば星は天に満ちて』心に残る物語 日本文学秀作選
のなかの小泉八雲著「耳なし芳一のはなし」を読みました。
 森鴎外著「百物語」 ・ 谷崎潤一郎著「秘密」 ・ 芥川龍之介著「疑惑」川端康成著「死体紹介人」 ・ 中島敦著「山月記」 ・ 中島敦著「狐憑」                           
 山本周五郎著「ひとごろし」 ・ 永井龍男著「青梅記」 ・ 井上靖著「補陀落渡海記」 ・ 松本清張著「西郷札」 ・ 梅崎春生著「赤い駱駝」 ・
立原正秋著「手」 ・ 小泉八雲著「耳なし芳一のはなし」
この本にはこれら13編の作品が収められています。「心に残る物語」という基準で、浅田次郎がこれらの作品を選んだことを述べています。そして一つ一つの作品について、感想が書かれています。
その中のひとつ、小泉八雲の「耳なし芳一のはなし」の感想を書き写しておきたいと思います。
≪かくしてほぼ年代順に私の好きな短編小説を並べた。しかしひとつだけ順序をたがえて、小泉八雲の「耳なし芳一のはなし」を掉尾に据えたことには意味がある。この作品は八雲のオリジナルでなく出典は古民話に拠るが、物語として本邦最高傑作であると私は信じている。目に光りなき芳一が、音にのみ頼って恐怖の体験をし、ついにはその耳すらも奪われるという鮮やかな結構は奇跡を見るが如くである。しかも、そのように簡単に言ってしまったのでは実も蓋もないくらい、この物語の細部にはさまざまの仕掛けが施されている。読み返すたびに新たな発見がある。日本の習俗を愛し、日本の美に帰依したラフカディオ・ハーンにしか、この稀有の物語を発掘し再生せしめることはできなかったであろう。そして、彼が強度の弱視にして隻眼であった事実を思えば、いよいよこの物語との因縁浅からぬものを感ずる。小泉八雲の日本に対する愛着は、単なる異文化への憧憬ではなかったはずである。彼はキリスト教普遍主義の呪縛から遁れて自由なる美を求めた、いわば文化的亡命者であったと私は思う。そうした彼を司祭と定めて、日本の美神はこの奇跡の物語を授けたのではなかろうか。
 母なる国の美しい言葉に托された先輩たちの訓えを、これからも誠実に守りかつ努力すれば、私にもいつか後生の人々の心に残る物語が書けるのかもしれない。それでも「耳なし芳一のはなし」だけは、無理であろうと思う。なぜなら、この物語は千年の時の間に千人の語り部が彫琢し、研磨した宝石だからである。≫

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