『<時>をつなぐ言葉』ラフカディオ・ハーンの再話文学(7)
2014/10/01(Wed)
 牧野陽子著 『<時>をつなぐ言葉』ラフカディオ・ハーンの再話文学の第七章 聖なる樹々―「青柳物語」「十六桜」 を読みました。そのまとめ、№1です。
 1樹霊の物語
 2「青柳物語」―樹木のいざない 
  ・原話「柳精霊妖」
  ・樹の妖精
  ・老樹のいざない

 1の樹霊の物語では、ハーンの日本の樹木への思いについての解説があります。
 西洋人が日本に来ての印象に、とにかく日本の樹木は美しい、と誰もが感じ、樹木の優しい風情に人間と心が通い合っているとさえ感じています。ハーンはこのように、人間の用に立つべく創造されたものという西洋古来の樹木観に対して、日本人のアニュミズム的な樹木への感性に深い共感を抱きます。
 2の「青柳物語」―樹霊のいざない は、主人公の若侍が青柳の霊である17歳の美しい娘に出会うまでの、ハーンの物語の進め方に注目します。
 能登の大名に仕える友忠という文武両道に秀でた若侍が、主君の命で都に上る途中、吹雪に襲われ、日も暮れはて、馬も進まなくなり不安に駆られたとき、柳の樹々の生い立つ近くの丘の小さな藁屋根の家を見つけ、宿をお願いして、老夫婦に迎い入れられます。ここで娘を見初めて、恋が芽生え和歌などを交わし嫁にもらう。しかし主君の許可を得ていなかったため、その娘の美しさを聞き知った主君の主筋に当たる細川候に召しだされてしまう。友忠は呼び出され死を覚悟で出向くと、青柳に密かに送った漢詩の素晴らしさに心打たれた細川候はその思いを遂げさせるべく婚礼を挙げさせ祝福してくれる。そうして幸せな5年が過ぎたある日、突然妻が苦しそうに、じつは私は人間ではなく、樹であることを告げ、誰かが私を伐っているのでお別れです。前世の因縁で結ばれた二人なので来世でも一緒になれるが、現世では死ななくてはならないと消えてしまいます。残された友忠は僧侶になって国中をあまねく行脚し、吹雪の日に迎え入れられた丘をみつけ、柳の木が何年も前に切り倒されていることを知ります。
 この物語の、≪そして丘の上の柳の樹陰の家へたどり着くと老婆がいたわるように「さあ、どうぞ」と中に入れてくれた。≫という言葉に注目し、柳の樹の精と結ばれる場面への導入を浮き上がらせています。
 もとの話、辻堂兆風作『玉すだれ』巻三「柳精霊妖」では、戦後の世でありながら詩心をもった友忠と娘の相聞歌と友忠が書き送った漢詩の素晴らしさが強調されています。筋立ては一緒ですが、ハーンの作品では、柳の樹の精と結ばれることが強調され、しかもその神秘へのいざないが、老樹の「さあ、どうぞ」なのでした。
 さいご、≪「青柳物語」とはつまりは、夢の世界を提示した老樹のいざないと、そのいざないに応える人間の物語なのではないか。≫としめくくられています。
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コメント
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幻想的ですてきな物語ですね。
獣が人間にへんげするのは昔話に沢山ありますが、樹木の精霊が美しい娘になる物語は知らずにおりました。
色々空想すると、自分まで若々しく変われるような気がしてくるので、おかしくなりますが、あくまでも空想の世界ですから許される事と思います。
 ご夫君霞様が志村様へ送付なさいましたご本、本日の国会巡りの折に私に託されました。花てぼ様へも読了後、お渡しする約束です。他に抱えている本がありますので、各々1ヶ月かかりますが、有難くお借りしておりますと、ご夫君へお伝え下さい。
 志村様に贈呈なさったものでしたら、最後は志村様に返却すればよいのだと思いますが、その点確認できずにしまいましたので、真に申し訳ありませんが、私のブログコメント欄へ返却の有無を記して頂けたらほっと致します。
月日ばかりが先を急がせます。のんびり屋の私には1ヶ月の早さが身にこたえます。以上、よろしくお願い致します。
2014/10/01 17:46  | URL | みどり #-[ 編集]
- みどりさんへ -
志村さんが一番本をお読みになられる方に出会われるかと思って押し付け贈呈をいたしました。皆様がそれぞれゆっくり暇に任せてお読みくださればと志村さんも思っておいでだと思います。
2014/10/01 20:54  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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