『ネルソン・マンデラ』⑴
2014/11/02(Sun)
 1989年1月初版 新日本出版社発行 メアリー・ベンソン著 村山淳彦・安倍登訳 『ネルソン・マンデラ』 を読みました。 
 みどりさんに送っていただいた書籍の中の一冊です。
 この本の原作は、ノートン社刊のアメリカ版とペンギン・ブックスのイギリス・カナダ版が1986年に出版されたもので、以後この本が出版される1989年には、1988年までの増補分の原稿の送付を受けて、結末部分にそれからの展開を含んでいるとのことです。ここまで書き込むと、それから約100年前に西欧人に野蛮だと思われていた日本のことを、ラフカディオ・ハーンがその著作『知られぬ日本の面影』をイギリスとアメリカから発行したことを思います。
 この本の反響もさらに世界の世論に大きく影響したのでしょうか、1964年から反アパルトヘイト運動のため死刑囚で投獄されていたマンデラは1990年釈放されました。
 世界の情勢に疎く、さらに遠いアフリカのことゆえよくわからないとノーベル平和賞を受賞する頃になってマンデラの名前を知っただけの私にとって、今初めて手にする『ネルソン・マンデラ』への読後感は、著者メアリー・ベンソンがこの本を通して読者に訴えたかったこととはかなり距離があります。
 釈放以後マンデラは南アフリカ共産党中央委員、アフリカ民族会議議長、下院議員、大統領となることを、この本が出版された頃、誰が予想できたでしょうか。いまになってマンデラを読むことは、出世物語の伝記となってしまうかもしれません。
 しかし、この本に出てくる固有名詞っぽいカタカナ文字が人名か地名かもよくわからず、なんどもあとさき読み返しながらの『ネルソン・マンデラ』は、人道主義を標榜しながら、資本の脅威を見せつけるやり方の、人種差別をこえて、年代とともにますます巧妙になっていく過程が、いまへとつづいてこの格差社会がさらに成熟していく過程と一致していることが読み取れるので、過去の物語として読み過ごすことはできません。
アフリカの他の地域の植民地や保護領や委任統治領ではいぜんとして目標に掲げられているのは独立です。
そのなかで、南アフリカは既に独立しています。何世代にもわたって植民者として侵入して、ある地方に根を下ろしていた白人の少数支配階級は、力を蓄えたヨーロッパの資本や武力や科学技術によってささえられ、念入りに組み立てられた、マンデラが「おそるべき暴力装置」と呼んだ、政治的経済的管理機構に、国民の多数をしめる黒人が従属させられてゆきます。
 マンデラは、大族長の座を保証されて、大切に育てられた族長の息子ですが、結婚相手を押し付けられて、逃げるように南端のケープ州からそのような都心に家出して行くのです。そのマンデラもそのような機構のなかにいやおうなく絡め取られていることを身を持って知ってゆき、髭をたくわえた年寄りが大きな焚き火を囲んで語ってくれた「白人がやってくる前の古き良き時代」を思い、共有地からの立ち退きや、犬頭税納入を拒否したアフリカ人が飛行機から爆撃されるといったものから、前アフリカ人の誇りをかけて戦うさまを綴っています。
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コメント
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この本の内容に触れ感想など書き綴ることは、とても難しいと思いました。
あかね様が如何に熱心な読書家であるかを、改めて感じます。
私は1960年代初めに安保闘争の中で、社会の中で階級のあることを学びました。自分なりの受け止め方でしたが、其の後自分は何の資産も持ち得ない生粋の労働者階級、それも末端に位置する人間だと言う認識に到り、現在も基本的に此の認識を変えていません。
1970年代、80年代、アフリカの民族解放運動や人種差別に関心を深め、ネルソンマンデラ氏の人間性に深く惹かれました。
アフリカに於ける様々な部族を一つにまとめ、人種差別の誤りを世界的認識に高めた功績は大きかったと思います。
弾圧に屈せず妻として夫を支えながら、自らも運動に立ち上がったマンデラ夫人にも感動しました。細かい部分は忘れていますが、こうしてあかね様が記載して下さった事で、記憶の一部が鮮明になりました。
 ご紹介ありがとうございました。
2014/11/04 16:25  | URL | みどり #-[ 編集]
- みどりさんへ -
 コメントありがとうございました。余りにも世界情勢に疎い自分をさらに思い知らされた一冊でした。人道主義を語りながら、利権のためなら平気で虐待や殺人ができる人間がたくさんいることを改めて認識した次第です。豪奢な生活をしている人の影の部分を見るようでした。私たちのように貧しいながらも、その日食べていけている自分を充分幸福と思えることにあらためて感謝です。
 昔に読まれていて忘れられていると思いますが、マンデラ氏にはユーモアのセンスもあって、所々でえいこうさんのようでしたよ。
2014/11/06 18:50  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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