『マルセル嬢誘拐』
2015/01/25(Sun)
 昨年の2014年9月に発行されたばかりの新幹社の浅見渓著 『マルセル嬢誘拐』 を読みました。
 風呂先生から著者が知人ということで紹介をいただき購入したものです。
 1968年12月27日金曜日、京都国立近代美術館から展示中のフランス十九世紀の代表的画家、アンリ・トゥールーズ・ロートレックの名画「マルセル」が盗まれたことが起因の作品です、
 盗まれた夜、当直で警備をしていた警備員が、年明けの正月早々責任を取って自宅の布団のなかで刺身包丁で自害するという不幸な事件が起きました。
 1975年12月27日午前0時、「マルセル」の窃盗犯罪は、犯人も絵も見つからないまま、時効が成立します。ところが、時効後1ヶ月たった、1976年1月29日、「マルセル」が届け出られてきます。学習塾の講師をしている青年から中身が何であるか知らないまま預かったと夫婦が朝知新聞(朝日新聞)に持ち込みました。届け出た夫婦は時効を告げる記事に大きく掲載された絵のなかの青い色をみて、包みから見えた絵の青い色を思い出し、もしかしてとのことです。鑑定者によって本物であると判定されます。預けてきた青年の名前は明言したものの、その青年がさらに誰から預けられたかについては語らないため、犯人については現在に至るまで迷宮入りとなって未解決です。
 この書の著者は、事件当時、本書では毎大新聞と名づけられた全国紙毎日新聞の京都支局で事件記者でした。事件後数年が経過して毎日新聞社の記念特集に、それぞれの記者が自分が記者生活で一番記憶に残る出来事について書いたものが掲載されることになり、彼は未解決の「マルセル」強奪事件について書きます。それを読んだ女性作家がそのことを題材にして小説を書きたいと、そのときの事件関係の資料を見せてほしいと申し出、2011年元旦より1年間、毎日新聞の連載小説として書き進められます。それを読んだおおくの読者から、その事件を取材した当人の書いたものが読みたいとの声があり、本書が出来上がったという経緯の本のようです。
 著者は、この事件では、自殺者もありその遺族の心の痛みを思い、部署が変わっても、転勤があっても、この事件の真相を探ることに心に留め、ついに、警察も犯人らしき人に行き当たっており、時効を過ぎていることから、とどめの確認もできずつらい思いをしていることもわかり、ことここにいたって、社会正義と遺族のために、信義に基づき犯人が自ら出頭することをうながすための思いをこれでもかこれでもかというほど訴えています。
 わたしは事件の翌年1969年11月に一人で京都を2泊3日で旅しています。この京都国立近代美術館にもゴーギャン展を観に行っています。本格的な美術館にいったのはこのときが初めてで、美術にまったく不案内な私もゴーギャンの「ヴァイルマテ」に金縛り状態になったのでとても印象深くおぼえています。今でも「ヴァイルマテ」も展示場内の雰囲気もよく覚えています。今思えばこの事件はその前年の暮れのことだったのです。
 また、著者の痛切に訴えてやまない社会正義。わたしは当時勤めていた建設会館に毎日12時45分に迎えに来るタクシーに乗って、合同庁舎の4階の中国地方建設局に出向いて、業界新聞やたまに全国紙の記者クラブのかたがたと、係長が報道向けに発表する建設・土木工事の発注に関する記事を聞き取ってメモし、県庁で大きな工事の発注があるときはやはり立ち寄っておなじことをして、タクシーで帰り、清書して上司に上げるという仕事をしていました。職場の上司から、記者の人たちがタクシーに同乗を希望されるときは気持ちよく受け入れるよう指示されておりましたので、このかたがたと話す機会もおおく彼らの社会正義感にもおおくのことを学んだことを思い出しながらの読書でした。
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コメント
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2015/01/29 01:06  | | #[ 編集]
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 連絡ありがとうございました。
2015/01/29 04:06  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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 27日の新聞でなく,
26日の新聞に掲載されていました。
2015/01/29 19:58  | URL | 深山あかね #-[ 編集]
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