『駅前旅館』
2007/12/24(Mon)
井伏鱒二の『駅前旅館』を読む。

この作品は新潮現代文学2  『井伏鱒二』 に収録されたものである。

昭和31年に執筆されたものが、54年にこの本に収められている。

この作品を読むのは初めてだが、子供の頃父親に連れられて映画を観た中にこの作品があったのではないのかという気がする。
父がよく連れて行ってくれた映画には伴淳三郎や淡島千景という俳優さんの出演するものが何本かあり、こどもながらに大笑いをしてみた記憶だけが残っている。
その中のひとつだという気がしていちど落ち着いて読んでみたかったがこのたび願いがかなった。
読んでみると、やはりそうだ。雰囲気が思い出されて懐かしい。
今一度映画を見たい。

≪それに、早くから生まれ在所を棄てて行った人間です。在所の人から見ると、どうせろくな者とは云われない。実際ろくな人間じゃあございません。≫
と、自分のことを語っている柊元(くぎもと)旅館の番頭が主人公なのだが、この主人公が律儀で、素人女や友人の身内の女には絶対に手を出さない。
また、自分を好いてくれていつでもいい仲になれる間柄になっても結局最後まできれいな仲でいる。
≪絽の朱色の長襦袢は、特別に染めさしたものに違いない。私は無断でその場に近寄って行ける特権を覚える反面に、その権利を放棄するのは、行使するより以上に心の保養になることだと気がつきました。≫
というところなどは心憎いほどの色気を感じるところだ。

映画を観て大笑いしたのは高沢という向かいの旅館の番頭の演技だったと気づく。
子供の頃は、色恋についての男女の機微はよく理解できなかったので、こんなところで大喜びしていたのかもしれない。
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