『13階』
2015/08/28(Fri)
 高野和明著 2002年15刷、講談社発行の『13階』を読みました。
 物語の最後が、思わぬどんでん返しに行き着くと、これははっきり、ミステリー小説といえるものなのだと思うくらい、死刑制度や、それへの法のあり方、さらに、人が人を裁くことにつづく死刑執行に関係する職員の葛藤など、深い問題に疑問を投げかけてくる結構重い作品でした。

 1998年8月東京の浜松町駅近くの飲食店で起こった傷害致死事件の犯人三上純一25歳に対する、量刑の実刑2年は、公訴事実から判断するとやや重いといえました。
 「相手を傷つけようとしていたのは被害者のほうで、被告人はその場を離れようと懸命にもがいているように見えました」先に手を出したのは純一のほうだが「相手を振りほどくにはそうするしかなく、相手の異常に気づくと、救急車が来るまで待っていて、現行犯逮捕された」と、その店のマスターは証言しているからです。
 刑期を終えて釈放になって、迎えにきていた両親と家に帰ることになりますが、自営の工場を残して、家は引っ越して古くて小さな家でした。一人で暮らしている弟に会いにいくと、人殺しの弟になってみれば高校にもおれず中退し、民事保障のために経済的に行き詰っている家の状況もあり、兄にひどい恨みを持っていることを知ります。
 そんな純一に刑務所の首席矯正処遇官の南郷正二がたずねてきて、極端に報酬のいい期限付きの仕事を自分の助手としてやってくれるよう誘ってくれます。弁護士から頼まれて、死刑囚の冤罪を晴らす仕事です。
 南郷が純一を誘ったのは、まずは、彼なら更生できるとの確信を持てたことです。さらに行刑観察記録の『身分帳』を読める立場にあったために、純一が高校2年のとき、家出騒ぎをおこしており、強盗殺人が起こった時、ガールフレンドとおなじ土地にいたことを確認していたからでした。
 この物語の大半は、この新たな犯人を探し当てるまでの2人の活動です。しかし、なぜ、刑務所の首席矯正処遇官が30年近く勤め上げてきた仕事を止めてまで、この仕事を引き受けたのか。その間に2人の死刑執行にかかわったことで、どんな思いをしてきたのか、あわせて、死刑執行起案書に決済を受ける五つの部署、13名(偶然か、死刑執行を意味する13階と同数)の官僚の苦悩なども綴られており、この職務の苦悩を読むことが、読者には大変に心の重いことでした。
 犯人は、『ホテル陽光』のオーナー安藤紀夫であることが判明します。彼は以前犯罪をおかし、そのときの保護司から、世間に犯罪歴をバラすと脅され、高額の金をつぎつぎ要求され、その保護司を殺害したのでした。そして純一が助手になるとは思いもせず、弁護士に真犯人を見つけ出すための高額の報酬を出していたのは、純一が殺した息子の父親でした。その父親は、懲役2年では軽すぎるとの恨みから、自分の工場の光造形システムで、釈放されて謝罪に来た純一の指紋を採り、新たに見つけ出させるよう画策した証拠物件にその指紋をつけておいて、純一を死刑に追い込もうとしたのでした。
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