『茨の木』
2016/07/24(Sun)
 さだまさし著『茨の木』を読みました。
 主人公の真二のもとへ、実家の兄が、去年脳溢血で急死した父の遺品のバイオリンを形見分けのつもりか、半年後に贈ってきました。
 東京から博多で酒屋を経営する実家に帰って、その経営方針をめぐって、後を継いでいる兄と喧嘩になり、父も怒って「もう来んでよか」と言い、そのまま東京に帰って2年たっての父の死でした。
 古いバイオリンを見て、懐かしく父を思って修理などしたところへ、実家の兄嫁から連絡があり、家族にははっきり告げてないがと、兄が脳血管性認知症であることを打ち明けられます。
 しかし、バイオリンの中を覗くとバイオリンの製作者が、イギリスはグラスゴーのアマチュアバイオリン製作者のR.C.Crawfordで1894年であると書いてありました。このようなところで作られたバイオリンがどうして父の手元にあったのかと、製作者のもとに行ってみたくなりイギリスにでかけて行きます。
 事前に頼んでおいた、通訳などしてくれるガイドが、真二が学生の頃初恋をした、美しい英語の教育実習生の先生に似ていることもあって、そのとき教わった教材のワーズワースの詩『茨の木』にうたわれている茨の木も、ワーズワースの故郷でもあるグラスゴーで見たいと思い、それもガイドに頼むのでした。 この美しいガイドは若いとき、バイオリンの勉強の為にイギリスに来て、高齢のバイオリンの先生と結婚したのでしたが、おなかに子どもができたとき、夫の酷い暴力のために離婚していました。ところが、夫は離婚を納得しておらず、ストーカーまがいのことをして彼女を追っかけています。ガイドをしている相手の真二を恋人と勘違いして殺そうとして、殺人未遂で逮捕されます。やっと落ち着いて探すことに専念しようとするのですが、このような事件のあとなので、二人とも疲れてしまい、気分を立て直すために、ガイドに時々電話をしてくる7歳の娘を呼び寄せるよう説得します。ロンドンからグラスゴーにやってきた娘は、ラジオで探してくださいとお願いするよう提案します。この提案のおかげで、グラスゴーではわざわざ遠く日本から、父親の形見のバイオリンの製作者を探しに来ていることが大きな反響となり、BBCでも取り上げられることになり、とうとう図書館の資料室で図書館司書の人が見つけてくれます。3人で製作者のお墓参りをして、お墓の前で、ガイドがバイオリンで数曲演奏してくれます。ふと見上げたお墓の向こうにある茂みに小さな白い花を一杯に咲かせている大きな茨の木に気づくという感動的な物語です。7歳の女の子は、彼のことを出会ったときから、いつか現れてくれると信じていた父親が現れたのだと思い込んでいます。ガイドとの結末を告げずに終わる物語でもあります。
 読み始め、しばらくは、実家での兄弟げんかなどの辛い話で、読みづらかったのですが、それを抜けると感動的で美しい物語でした。さだまさしは、『解夏』に続いて2冊目でしたが、どちらも美しいお話で、こんな物語がつむぎだせるさだまさしはすごいなと思いました。
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