『日蝕』
2016/08/10(Wed)
 平野啓一郎著 『日蝕』を読みました。
 読みかけの本が数冊あるにもかかわらず、本の帯の“芥川賞受賞作”に惹かれて、今日は裏山登りを取りやめて、集中して読みました。
 主人公のニコラは、パリ大学で神学を学んでいたとき、一部分だけ持っていた『ヘルメス選集』を読み返していが、キリスト教と異教の古代哲学の融合を志ざし、それを完読したいという希望を持っていました。パリでは無理だが、リヨンなら手に入ると教えられ、1482年リヨンに赴きますが、ここでも手に入れることがかなわず、司教からフェレンツェへ行った方がいいと教えられるが、とちゅうヴィエンヌの教区にある村の錬金術師に会うように助言されます。
 宿を決めて、物静かなピエェルを訪ね、書棚の沢山の書物の中に『ヘルメス選集』を見出します。家に通って蔵書を読むことを許可されたニコラは、思索を深めたり、錬金術についての講義を聴いたりすることができます。
 ある日、ピエェルが、悪魔が出現するとうわさされている森に通っていることを不思議に思い、こっそり後をつけます。森の中にある洞窟に入って行き、その中で、金色に輝く両性具有者を目撃します。ピエェルは、全裸の両性具有者の乳房や、ペニス、などに儀式的な接吻をする姿を見て、最近知り合った、異端審問官のジャックから聞かされていた、魔女のサバトの儀式を思い出し、逃げ出します。
 以後、村には奇妙なものを見たという噂がたち、久しく冷害による貧困にあえいでいたにもかかわらず、疫病が蔓延し始めた。死人が続々と出はじめ、豪雨にも襲われ、村人の不安はジャックの魔女狩りへの思いに拍車をかけ、橋の真ん中に異様な格好をして、男か女か判らない者がいるとのことから、ジャックは「この者こそは、村に災厄を起こした魔女にほかならぬ」と捕まえ異端審問にかけ、火刑に処せられることになりました。処刑が始まっても両性具有者は泣き叫びもせず、身を焼かれ始めると痙攣し、突然に空が暗くなり、皆既日食が始まり、さらに、男女の巨人が現れ性交をはじめ、虹を描きながら射精する。その様子を見て、ニコラは両性具有者と霊的に共感し、宇宙との神秘的な合一を体験します。そして両性具有者は消滅します。すぐ後、ピエェルが灰の中から金塊のような物質を拾い上げそのことでジャックに捕らえられてしまいます。ピエェルの審問中にニコラは村を出て最初に目ざしていたフェレンツェへと旅立ちます。
 30年後・・・ニコラは出世して、時間もできて、錬金術を始めます。
《錬金術の作業には、それを為すことそのものの裡に、ある種の不思議な充実があるということである。私は一握りの小さな物質に触れている時、自分が恰もこの被造物界の渾ての物質に、云わば世界それ自体に触れているかの如き錯覚を感ずる。》と記しています。
 この部分を読んだとき、私が子供の頃、錬金術のことを何かで読んで、興味を持ち、南方熊楠の粘菌を、錬金と聞き違えて、彼の本を読んだことがありましたが、熊楠が粘菌を研究しているときも、世界それ自体に触れているかのごとき錯覚にとらわれていたのではないかという思いがいたしました。

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