『小説 小泉セツ』
2017/01/26(Thu)
 寺井敏夫著者『小説 小泉セツ』を読みました。
 山陰文芸協会発行の平成27年9月15日初版です。
 わかりやすくて、あっという間に読み終えました。
 小泉八雲については、原作・脚本ともに山田太一で、1983年3月3日から24日までNHK総合テレビでテレビドラマとして放送されたそうですが、この『小説 小泉セツ』もすぐにでもテレビドラマ化されそうな作品です。
 松江にあって、小泉セツがハーンと一緒になることによって、この本に書かれていたような、つらく悔しい思いをしたことは読み進んでみると当然といえば当然ですが、これまでそんなことにはほとんど無頓着でした。小説だから書ける真実かもしれません。
当時の松江を聞き知っている人の想像であれば真実により近い、あるいはそれ以上とも思え、なんと迂闊であったかと自分ながらあきれる思いでした。
 平明な文章にもかかわらず、これだけの切羽詰った心情を交え、奥行きをもって語られるのが小説だとしても、小泉セツを語ったものとしてはとても新鮮に思えました。
 
 士族の、食うや食わずの苦しさが語られるなかに、明治の政変が語られ、地租改正を初めとする税制などの変化による戸惑いについての記述はどこかで読んだような・・・・と、私の高校時代の恩師、阿川静明先生から送られた先生の著述による平成3年11月1日発行の『ふるさとの灯―船所仏教青年会日誌より』のことを思い出していました。
この本は国道54号線の三次の高速道路分岐点あたりの船所の、仏教青年会の毛筆の記録、明治41年起の『日誌』を解読活字化されたものです。明治の政変によって、農村の人たちも戸惑いの連続だったはずです。自給自足的な生活をしていた農村の人たちが、貨幣経済に巻き込まれ、地租改正によって、土地所有が認められ、耕作物の規制がなくなった分、土地に対する税金もかけられるようになり、出来高への租税ではなく、耕作地の面積に応じての租税になり、豊作・不作に関係なく同額の税金がかけられ、米ばかりでなく、より現金収入の見込みのある作物への研究、その流通などへの研究と、不況にあえぎつつ、自らの発展と向上のために、何をなすべきか自問自答する青年たちの記録です。夜学会での、人の集まる場所で自分の考えを簡単にまとめ、他人の前で発表する5分間演説は、帝政ローマ時代に盛んであった雄弁を競ったことを思い出させるとの先生の感想もあります。
先生の書にはまた、「人間は歴史をつくり、歴史によって人はつくられる」というヘーゲルの言葉も記されてありますが、小泉セツも歴史を作った一人ではないかとの思いをいたしました。
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