『子どもの宇宙』
2017/03/28(Tue)
 河合隼雄著 『子どもの宇宙』 を読みました。
岩波の新書版386で1987年の発行です。
 「子どもの宇宙」とは大きい題をつけたものと思うが、これも、子どものもつ世界の広さと深さを何とか読者にお伝えしたいという気持ちから、と述べられていますが、十分すぎるほどにそれに答えられていることに重さを感じます。
 大人は目先の現実に心を奪われるので、自分のなかの宇宙のことなど忘れてしまい、その存在に気づくことには 案外恐怖や不安がつきまとうようでもあるが、あくまでも、この広くて深い子どもの宇宙に、開かれた教師の態度が必要なことを忘れてはならないことをのべているので、指導書としての書物のようですが、自分の子育ての至らなさなどから、自分自身がクライエントとしても読んで考えることができです。
 ⅠからⅦまで、子どもと家族・秘密・動物・時空・老人・死・異性と題して、子どもが、成長してゆくなかで、いろんな問題が心のなかに起こってくるとき、これらのものが、それらの問題をのり越えるうえで、どのような役割を果たしているのかが考察されています。
 それらとの関係をとおして意外と乗り越えられていると感じられる事例を、童話や、児童文学や、臨床の研究発表などを例にあげて詳細に解説してあります。
 子どもと家族ということでは、子どもが実は家族のなかでよけいものだと感じたり、憎まれっ子だと感じたりして、家出を決行したりすることについて、このことが自我の目覚めや、アイデンティティにかかわるものであることがあり、そして、そんな出来事が、家庭を変革させることがあることを述べています。
 子どもと秘密でも、秘密を持つことは、他者がいなければ秘密が成り立たないといったことから、他者と自分という意味で、やはり、自我の目覚めや、アイデンティティにかかわるものであることがあるようです。
 子どもと動物では、≪犬は母親代理として、彼が暖かい土の匂いのする愛を与えてくれたが、また一方では、彼の分身として出立に当たり彼が克服しなければならなぬ反面を背負って死んでいったのである。人格の変化には、常に「死と再生」の主題がつきまとうものであるが、その死の部分を犬が引き受けてくれた、とも言うことができる。≫、抜粋の一部なので、これだけではわかりにくいとも思いますが、時間をかけて解決されていく状況が記されているのです。ここで、さらに、克服しなくてはならない課題を持っている子どもに≪「よくしてやろう」とする善意によって急激で極端な改善を願う心の背後には、相手の死を願う気持ちが潜在しているとさえいえるかもしれない。≫とも述べられ、最悪を見つめてのきびしい助言です。              
 子どもと死では、子どもと死について想起されることに、明恵上人が13歳で「今は早13に成りぬ。既に年老いたり」と、自殺しようとしたときのことが書かれています。これは、よくそのとき考えていたことを思い出してこのことに当てはめてみると、思い当たる人もあるのではないかとおもわれて、あるいはそんな自殺もあるかなと思われます。
 それぞれの課題ごとに、たくさんの児童文学作品が紹介されていて、そのように視点を変えてあらたに読めそうです。


スポンサーサイト
この記事のURL | 未分類 | コメント(0) | TB(0) | ▲ top
<<『万葉集』 | メイン | 『良寛の四季』 >>
コメント
コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する


▲ top
トラックバック
トラックバックURL
→http://yamanbachindochu.blog106.fc2.com/tb.php/982-cf1d2098

| メイン |